「防護柵と単木保護の新たな施工及びニホンジカの侵入抑制の現地検討会」を開催
掲載日:令和7年12月10日
高知中部森林管理署
令和7年11月19日、高知県香美市物部町別府の杉ノ熊山70林班い3小班において、「防護柵と単木保護の新たな施工及びニホンジカの侵入抑制の現地検討会」を開催しました。
当日は行政機関、林業事業体、森林管理局・署などから41名が参加し、急傾斜地での再造林における獣害対策と林地保全の課題について、現場を視察しながら意見交換を行いました。
高知中部森林管理署管内の国有林は、四国の中でも特に急傾斜地が多く、地すべりの多い地域であるうえ、ニホンジカの個体数は自然植生と共存できる水準の10倍以上と推定されており、食害による下層植生の消失が深刻化し、その結果、表面土壌の浸食が進み、ザレ地の拡大が大きな課題となっています。
今回の検討会では、こうした課題に対応するため、当署がこれまで取り組んできた獣害対策や林地保全対策を実際の事業地で応用した施業例として紹介しました。
立木利用の防護ネットは、周囲にある立木に100cm又は180cmのネットを区域によって使い分け、立木への影響を低減するためにゴムを使用して固定しています。
利点としては補修時の資材運搬を不要にし維持修繕の省力化につながる一方、立木選定の難しさや、施工の直線性が確保できない点が課題です。
単木保護では、耐雪仕様として補助支柱を追加することと、資材の植栽木への巻き込み防止を考慮して止杭2本を使い支柱・苗木の間隔を広げる工夫をしています。コストは4割増となるものの、補修を考慮すればトータルコストの抑制が期待できます。
金網ネットについては、従来ネットにおける土砂の堆積や落石による破損対策として、耐久性のある資材となっています。今回は施工がしやすい林道際に設置し、土砂が堆積してもネットを切り、土砂を取り除いたあと補修可能という利点や、なにより耐久性が抜群である点が挙げられます。
設置時には支柱を立てる削孔作業に労力がかかりましたが、ネットを張る作業は慣れればスムーズにできるということも施工者から報告されています。
意見交換会では、民有林関係者からは「この場所でおこなわれたような再造林はコストがかかり現実には厳しいが、勉強になった」「現在計画している森林経営管理制度を活用した森林整備箇所において、立木利用防護柵は応用できそうだ」との意見もありました。
また、「現場ごとに施工方法を変える発想は勉強になった」「今後に向けて撤去を見据えた設置や資材の選定が必要である」「初期費用が掛かりましになるが、維持管理や補修点検などトータルコストの検証が必要」「急傾斜地でザレ地化が拡大している現場にとって林地の保全は重要だ」といった声が参加者それぞれのセクションから寄せられました。
今回の検討会を通じ、獣害対策と林地保全という共通課題について、参加者が同じ目線で考えるきっかけが生まれたのではないかと感じています。今後も民有林と国有林が連携し、森づくりと山の保全に取り組んでいきます。



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高知中部森林管理署
担当者:森林技術指導官
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