トピックス_令和6年度(2024年)
2024年10月29日(火曜日)
「弥生杉の取扱いに係る検討会」を開催
今年8月末に襲来した台風10号の影響を受け倒伏した弥生杉について、今後の取扱いを検討するため、有識者や地元関係者等による「弥生杉の取扱いに係る検討会」を開催しました。
午前中は、白谷雲水峡の現地において倒伏の経緯等の説明と現状確認を行い、弥生杉が根元から3m付近で幹折れしたことや、幹の中心部は腐朽が進行し空洞化している状況、遊歩道上には弥生杉の白骨化した樹幹上部が散乱している状況などを確認しました。
午後からは、当保全センターにおいて今後の取扱いについて議論し、各構成員の皆様方から多くの意見が出されました。
本日、議論された内容については、事務局で整理し取りまとめた後に、再度、各構成員の皆様にご確認いただき、年内にホームページで公表することとしています。
弥生杉の倒伏状況を確認(左)、挨拶する森本屋久島署長(中)、検討会での議論(右)
2024年10月26日(土曜日)
「花山固定試験地に係る現地調査」に参加協力
琉球大学(学生含む5名)及び宮崎大学(学生含む3名)の合同調査チームでヤクスギ天然林5固定試験地のうち、一番遠くて険しい箇所にある「花山固定試験地」の調査に向けた現地調査(試験地位置の再確認及び現地確認)が実施されました。当保全センターにも応援依頼があり、職員2名が現地調査に協力しました。
学生たちは、現地到着まで3時間30分の長丁場を乗り越え、ヤマビルとも戦いながら一心不乱に歩道を登りきり、調査では、2班に分かれ各大学の先生からの指導の下、学生が主体となり声を掛け合いながら積極的に動き、短い時間ではありましたが、概要調査を実施しました。調査を行い慎重に調査していました。次年度以降に、当該試験地の本調査を実施することになりますが、10名程度で山泊まりを行い実施することも視野に入れながら検討されることとなりました。調査終了後は、急傾斜で足元が滑る中、花山歩道入口に到着したのは夕暮れ間近の17時30分を経過していました。本当にお疲れ様でした。
九州森林管理局と九州・沖縄5大学間では、人材育成や技術開発に関する協定を締結しており、今後においても森林・林業の発展のために協力していきたいと考えています。
花山歩道入口にて(左)、調査方法について説明(中)、試験地位置の再確認(右)
2024年10月25日(金曜日)~26日(土曜日)
「湿原保全対策に係る検討会(環境省検討会)」に参加
令和6年度「湿原保全対策」に係る現地検討会及び現地調査を踏まえての意見交換会が開催され、九州森林管理局計画課及び当保全センターからも参加しました。
初日は、終日雨が降る中でありましたが現地において、何処の位置に堰を設置し、どの程度必要か、木製歩道の撤去箇所など検討されました。また、九州森林管理局で昨年度まで設置した試行的な丸太木柵やスギや広葉樹の枝条を利用した堰の状況及び新たな堰の設置場所なども同様に検討しました。
2日目は、場所を環境省屋久島世界遺産センターへ移し、有識者から流水分散対策として透過型の堰の設置、L字型木道の一部撤去、木道遊び場直下の対策、祠土台部分の浸食防止対策、木道代替ルート等、それぞれモニタリングを行うことなど助言を頂き、今後のスケジュールや方法等について再確認し、11月中旬に堰等を設置する方向で決定されました。併せて、当局の新たな堰も同様に設置することで決定しました。
湿原保全対策は、環境省と林野庁が実施する項目ごとに仕分けされていますが、関係機関が課題や実施方法など共有しながら進めていくとことが重要だと考えられることから、同じスタンスで今後も取り組んでいくこととなりました。
現地検討会の様子(左)、枝条を利用した堰の状況(中)、新たな堰の候補地(右)
2024年10月03日(木曜日)
大分舞鶴高校が毎木調査を実施
愛子嶽国有林205林班において、大分舞鶴高校理数科1年生の18名が毎木調査を行い、屋久島森林管理署の森林官及び当保全センター職員が調査の補助と指導を行いました。
この調査は、大分舞鶴高校が将来の国際的な科学技術人材を育成することを目的とした先進的な理数教育の一環で平成26年から行っており、プロット内樹木の胸高直径、樹高、位置等の測定や樹種同定の調査を行うものです。調査の結果をもとに林内の樹木の成長の推移を継続的に調査しています。
例年、宮之浦嶽国有林内で行っていましたが、調査開始から10年が経過したため、当地での調査は一区切りとし、今年度より新たに調査地を設定しました。
当日は小雨の降る中、慣れない林内の作業に苦戦していた生徒たちでしたが、時間が経つにつれ自分たちで考え協力し、積極的に調査を行い、怪我無く調査を終えることができました。
測悍を用いた樹高の測定(左)、手作り図鑑を使用した植物の同定(右)
2024年10月02日(水曜日)
松枯れ被害対策の現状と今後の対応について意見交換
当保全センター会議室において、令和6年度松枯れ対策連絡協議会屋久島支部会を屋久島森林管理署、環境省屋久島自然保護官事務所、鹿児島県屋久島事務所、屋久島町、森林総合研究所九州支所、屋久島ヤクタネゴヨウ調査隊等の関係者21名が参加し開催しました。
当保全センター奥村所長の司会進行により、各機関から昨年度の屋久島における松枯れ被害への対応状況及び令和6年度の現状と対策等について報告がありました。屋久島の松枯れ被害は昨年度と比較すると減少しているが、11月以降に増加する傾向がみられるため、今後も注視していくことが重要であるとの報告及び、世界自然遺産地域を抱える西部地域を中心に栗生集落から一湊集落にかけて伐倒駆除及び樹幹注入等を実施していることなどが報告されました。
森林総合研究所九州支所の金谷整一主任研究員からは、屋久島・種子島におけるこれまでの取組状況及び松の保護・保全と利用について幅広く情報提供があり、今後の対策等については関係機関等が連携し取り組むことが必要との提言がありました。
最後に、屋久島森林管理署森本署長から、全体的に減少している状況であるが引き続きモニタリングを行い、各機関が連携・共有しながら対策を講じていくことが重要であるとの挨拶があり、会議を終了しました。
支部会議の様子(左)、金谷主任研究員からの情報提供(右)
2024年10月01日(火曜日)
屋久島高校にて鹿児島県と合同で森林環境教育を実施
森林生態系の保全についての講義
10月1日(火曜日)に鹿児島県森林技術総合センター(以下、技術センターとする。)及び熊毛支庁屋久島事務所の職員とともに、屋久島高校にて森林環境教育を実施しました。この森林環境教育は、鹿児島県が高校生等を対象に、森林・林業の果たす役割や重要性及び木材の良さなどについて理解を深め、県産木材利用や林業・木材産業への就業を促進することを目的に行っているものです。
当日は、屋久島高校にて技術センターの林業専門普及指導員より森林・林業の役割について講義を行いました。その後、屋久島森林管理署の森林技術指導官から、小杉谷の歴史を中心に屋久島の過去の林業の話や、土埋木と地杉生産の現在の林業についてクイズを交えながら講義を行いました。当保全センターは、「森林生態系の保全と利用」と題し、森林生態系の保護の歴史、屋久島世界自然遺産地域管理計画や当保全センターの主な業務について講義を行い、世界自然遺産や林野庁の取組について詳しく知ってもらうとともに、世界的に見ても特異な島ということを再認識してもらうことができたのではと感じています。
最後に、地元事業体や林野庁等の森林・林業に関する就職先も視野に入れて欲しいという言葉で締めくくりました。
2024年09月09日(月曜日)~13日(金曜日)
令和6年度(夏期)インターンシップの受け入れ
鹿児島大学3年の学生1名を農林水産省就業体験実習(インターンシップ)として受け入れ、一週間、当保全センターの業務及び屋久島森林管理署業務内容等について体験実習を行いました。
まず、当保全センターの業務概要を始め、生態系管理の保全対策(モニタリング調査)や気象観測データ収集、ヤクシカ被害対策、各種森林パトロール、外来種アブラギリ対策・繁茂状況調査、レクリエーションの森の保全・利用及び天文の森等の植生調査、屋久島の森林環境教育等、入林届から受理など、業務のほぼ全般について学習してもらいました。
また、4日目は屋久島森林管理署の業務概要や森林調査等に関する森林官業務について、現地調査・説明等を中心に学習してもらいました。
研修生からは、「安全な登山を提供するための重要な業務であることや、屋久島の自然を如何に受け継ぐかなど継続性のある業務が多いことに気づかされた。屋久島の自然と伝統文化を子どもたちが大切に思ってもらうことなど様々な目的をもった業務であることも学んだ。地元の関係各所との連携を図ることが重要であると感じた。」との感想をいただきました。
今期の体験実習は、台風10号の被害調査や雨天などで悩まされましたが、安全で無事に終了することが出来たことに感謝します。
今回の体験が今後に活かされることを期待しています。
生態系管理について説明(ヤクスギランド)(左)、資源の循環利用について説明(屋久島署)(右)
2024年08月28日(水曜日)
弥生杉の倒木
屋久島で最大瞬間風速約47mを記録した台風10号による暴風を受け、樹齢3,000年と言われている弥生杉(標高:719m、胸高周囲7.6m、樹高26m)が、根元から約3m程度のところで幹折れして倒れました。
弥生杉は、レクリエーションの森として指定された屋久島自然休養林の白谷雲水峡にあって、駐車場から30分程度で行くことができ歩道も整備されているため、多くの方に親しまれた屋久杉巨樹・著名木です。大部分の大枝は枯れ、樹幹も腐朽が進んでいたため、今回の台風10号の猛烈な風に耐えることができなかったようです。
今後の弥生杉の取扱については、関係機関と協議・検討してまいります。
※白谷雲水峡は、倒木のほか土砂崩れなどの発生により現在閉園中です。
なお、開園の際には改めて屋久島レクリエーションの森保護管理協議会のホームページでお知らせします。
生前の弥生杉(左)、倒木した弥生杉(中)、倒木した弥生杉(上空より)(右)
2024年08月10日(土曜日)
夏季期間中の縄文杉マナー指導を実施
縄文杉を観賞する登山客
8月10日(土曜日)に屋久島山岳部保全利用協議会(※)の一員として、当保全センター職員1名、屋久島森林管理署3名が縄文杉周辺にて登山客のマナー指導を実施しました。 このマナー指導は、夏休み期間に混雑が予想される縄文杉デッキ上で、登山客のマナー遵守や順路逆走等による混雑を緩和するために実施しているもので、デッキを訪れる登山客への順路案内やデッキ上での飲食禁止等の呼びかけを行いました。当日は、マナー指導を行った 10:30~13:00の間に約170名の登山客が訪れ団体客や家族連れ等で賑わっていました。連休初日のためか、登山客は少ない印象でしたが、マナーを遵守し鑑賞を楽しんでいました。
今後、さらに登山客が増加することが考えられますので、安全で快適な登山ができるよう関係機関との連携や定期的なパトロールを実施していこうと思います。
※環境省・鹿児島県・屋久島町・屋久島観光協会・屋久島環境文化財団・林野庁等で構成されている協議会
2024年08月02日(金曜日)
令和6年度「屋久島森の塾」を開催
屋久島森の塾は、国有林や屋久島の森林・林業をベースとした森林環境教育について屋久島町内の教職員の方々に理解と認識を深めていただきたいという目的で、平成30年度から毎年開催しています。今年度は屋久島森林管理署及び屋久島町教育委員会共催のもと、小杉谷小・中学校跡地で実施しました。令和4・5度と開催できなかったため、3年ぶりの開催となり、小・中学校合わせ、20名の方にご参加いただきました。
当日は荒川登山口に集合し、開会式を行いました。携帯トイレや注意事項等の説明を行ったあと、小杉谷小・中学校跡に向け出発しました。途中、林業遺産についてのクイズや植物について説明を行いながら、現地に向かいました。
小杉谷小・中学校跡に到着後、午前中は、「屋久島森林生態系保全センターの概要」、「林業遺産について」や「小杉谷の歴史について」の説明をクイズの出題を交えながら行いました。
午後からは、小杉谷小・中学校跡近くの散策路にて、当時の森林軌道跡、炭窯跡を含む当時の生活の痕跡、屋久島の花崗岩の特徴や屋久島でよく見られる樹木についての説明を行いました。午前中の座学の復習を、現地にて行うことができ、林業遺産や小杉谷の歴史についてより理解が深まったと感じています。
散策終了後は、小杉谷小・中学校跡に戻り、丸太切り及び木工体験を行いました。丸太切り体験では、数種類の樹木から伐りたい樹木を選んでもらい、好みのサイズにノコギリで伐ってもらいました。木工体験では、箸置きかコースターを選んでもらい、小刀やサンドペーパーを使用し、思い思いの形に仕上げてもらいました。普段なかなか使う機会の少ない道具を使用し、加工することで、木の香りや木材を身近に感じてもらうことができたと感じています。
参加者からのアンケートには、「歴史がとても勉強になった」、「体験活動も楽しかった」や「様々な視点から小杉谷の話がきくことができて良かった」など多くの感想をいただくことができました。これらの意見を踏まえ来年度も「屋久島森の塾」を開催したいと考えます。
小杉谷小・中学校跡での講義(左)、散策中の参加者(中)、様々な樹木の丸太切り体験(右)
2024年08月05日(月曜日)
令和6年度 屋久島レクリエーションの森保護管理協議会総会の開催
令和6年度の屋久島レクリエーションの森保護管理協議会総会が屋久島町役場で開催されました。本協議会は屋久島の「レクリエーションの森」の保護・管理及び活用を円滑に推進することを目的に、平成 19 年に設立されたものです。
総会では、令和5年度の補正予算に関する報告、活動実績及び決算報告、令和6年度の活動計画及び予算の提案等がなされ承認されました。 また、役員改選が行われましたが全員が再任となりました。
白谷雲水峡・ヤクスギランドの年間入場者数は平成 30 年度では 160,309 人、令和元年度は 134,320 人であったのに対し、令和2~3年度は、新型コロナウイルス関連で6万人台と半減しましたが、5類感染症に変更された令和5年度は、120,241人まで増加しています。
令和6年度は、前年度増し115%との目標値を立て、新規項目として白谷小屋でのコンポスト化の試行、巡視時の著名木樹勢状況の確認などを含めた各種事業計画が承認されました。
また、協議会の事業はヤクスギランドや白谷雲水峡利用者からの協力金で運営していますが、利用者の増減により協力金も大きく変動するため、財政状況に応じた保全管理等が求められているとの説明がありました。
最後に、昨年と今年7月末現在の山岳遭難事故発生状況等について、屋久島警察署から情報提供があり、改めて登山に対する安全確保が重要であるとの認識に立ち、今後においても、引き続き登山者等への呼びかけが必要だと感じました。
森本屋久島森林管理署長あいさつ(左)、総会の様子(屋久島町議会棟)(右)
2024年07月30日(火曜日)
荒川登山口から大株歩道入口までの橋梁パトロール
荒川登山口から大株歩道入口までの区間について、屋久島森林管理署、環境省、鹿児島県、屋久島町、警察署、屋久島観光協会ガイド部会、当保全センターが参加し、毎年行っている点検を実施しました。
今回の点検では、6月に起きた荒川橋での転落事故を受け、森林軌道内の橋梁点検を主に実施しました。荒川橋での転落防止策について、県の担当者から具体的な対策について説明があり、今後の着手に向け協議を進めていくとのことでした。ほかの橋梁や歩道沿いについても、転落事故があった箇所や危険な箇所を参加者で共有し、危険な箇所には環境省が作成した、看板を設置し注意喚起を行いました。
参加者からは、草木が繁茂していることで、カーブの先が見えなかったり、そのことで山側でなく谷側を歩行することになるので危険なため、歩道の山側の草払いに対する意見が出されました。
屋久島町からは、今後トロッコ道の踏板の更新について順次進めていくとのことでした。
転落防止策についての説明(左)、参加者による橋梁点検(中)、踏板の危険個所(右)
2024年07月25日(木曜日)・26日(金曜日)
屋久島世界遺産地域科学委員会・ヤクシカWGを開催
令和6年度第1回屋久島世界遺産地域科学委員会とヤクシカ・ワーキンググループ(以下ヤクシカWG)及び特定鳥獣保護管理検討委員会合同会議が、屋久島環境文化村センターにおいて開催されました。
- 科学委員会の概要(7月26日)
委員会では、(ア)前回会議の議論整理、(イ)屋久島世界遺産地域管理計画の実施状況の実績及び予定、(ウ)令和5年度世界遺産地域モニタリング調査等結果の概要、(エ)令和6年度世界遺産地域モニタリング調査等計画、(オ)令和6年度第1回ヤクシカ・ワーキンググループ及び特定鳥獣保護管理検討委員会合同会議、(カ)屋久島世界遺産地域モニタリング計画の改定等について関係機関より報告され、各項目ごとに議論されました。モニタリング計画の策定については、評価指標と評価基準との関係、気象など測定項目では、欠測が少ないことなど、今後のモニタリング方法やデータの取り方を含め活発な議論がされました。委員からは、「そろそろ若返りも必要では」「検討してもらいたい」との意見も出されました。
- ヤクシカWG及び特定鳥獣保護管理検討委員会合同会議の概要(7月25日)
会議では、(ア)ヤクシカの生息状況等、(イ)捕獲等の被害防止対策、(ウ)森林生態系の管理目標及びその他植生モニタリング等、(エ)特定エリアの対策(西部地域)等について議題とし、5年度の結果や6年度の事業計画が関係機関より報告され議論が行われました。ヤクシカの生息状況について、推定個体数は島全体として令和4年度と比較し増加しているとの報告があり、特に、島の西部と西南部の地域で密度が増えているとのことでした。糞粒法による調査は誤差が生じやすいため単年度での判断で増加に転じたとするのは厳しいとの意見なども出されました。一方で捕獲数は、年々減少していることが報告され、捕獲を実施している機関の実情や、より効率的な捕獲等について議論されました。
ヤクシカWGで挨拶する池田計画保全部長(左)、科学委員会の様子(右)
2024年07月24日(水曜日)
林業遺産現地検討会で学習
東京大学大学院 柴崎茂光 准教授を講師にお招きし、屋久島森林管理署、屋久島町屋久杉自然館、当保全センター職員15名が参加し林業遺産現地検討会が開催されました。島内にいくつかある林業集落跡の中から、宮之浦の林業集落跡及び森林軌道跡を廻り当時の生活の様子や林業についての歴史などを学習しました。
宮之浦官行集落跡では、最盛期で200人程度が生活していたということで、苔に覆われたお風呂場や炊事場の跡などに往時の暮らしの一コマをうかがうことができました。また、軌道作りに必要な火薬を保管する頑丈な倉庫やテニスコートの跡地などを確認し、軌道作りの困難もありながらスポーツを楽しむ環境も整っていたことなどもわかりました。
森林軌道跡地周辺は、現在、スギ人工林となっており、林業遺構として将来にわたり環境教育の場などとして適切に保全管理していくためには、このスギ人工林についても適切な森林管理を行う必要があると強く感じました。
当時の集落状況を説明する柴崎准教授(左)、炊事場跡(中)、軌道敷跡の石積(右)
2024年07月11日(木曜日)
安房中学校森林教室を実施
屋久島森林管理署及び当保全センターで安房中学校2年生を対象に森林教室を実施しました。
当日は小杉谷集落跡での開催を予定していましたが、現地の悪天候が予想されたため、予定を変更し、安房貯木場と(株)屋久島地杉加工センターを見学後、当保全センターに移動し、講義や体験活動を行いました。
安房貯木場では、春牧森林事務所の森林官からヤクスギ土埋木、その歴史や現在の屋久島林業について説明があり、生徒は初めて見る土埋木を興味深く見学していました。
(株)屋久島地杉加工センターでは、地杉と内地のスギの違いなどを説明後、グループに分かれて製材の様子を見学しました。生徒は木材がどのように加工され、私たちのもとに届いているのか理解してくれたと思います。最後に製材時に出るおがくずをお土産としていただきました。生徒は地杉のいい香りに癒されていました。
当保全センターに移動後は、林業遺産や小杉谷の歴史について、初公開の土埋木搬出の映像の鑑賞をしながら説明を行いました。言葉や資料だけでなく、映像を交えることでより一層、理解を深めてもらえたと思います。
屋外では、丸太切り体験では地杉だけでなく、数種類の広葉樹も用意し、屋久島に自生する樹木の紹介を行いました。丸太切りはとても盛り上がり、樹木に触れ合ってもらう良い機会になったと思います。
今後も様々な森林教室を実施し、屋久島の子どもたちに屋久島の森林や林業について学びを深めてもらえるよう、努めてまいります。
土埋木について説明する職員(左)、地杉加工センターにて製材見学(中)、生徒による広葉樹の丸太切り体験(右)
2024年07月03日(水曜日)
雨量計データ記録装置の機器交換が完了
当保全センターでは、気象モニタリング調査個所を島内の主要地点14個所に、雨量計と温度計あわせて14台を設置しています。これは、気候変動が遺産地域等の自然環境に与える影響などを把握するための基礎データ収集であり、今後も継続して観測を行っていきます。
雨量計及び温度計のデータ記録装置については、厳しい自然環境や経年劣化により誤動作や不具合も発生していたため、2023年より新しいデータ記録装置に順次交換していましたが、最後の1台、ヤクスギランドの雨量データ記録装置を交換し、すべてのデータ記録装置の交換が完了となりました。新しい装置の電源寿命は長く、バッテリー不具合いによるデータの欠損等も減ることが期待されます。
新たな機器を導入したことにより、スムーズなデータ収集を行い、森林生態系への研究等に資するとともに、情報提供にも努めることとしています。
旧データ記録装置(左)、新しいデータ記録装置(右)
2024年06月18日(火曜日)
屋久島高校で登山指導を実施
登山マナーについての説明
屋久島高校において、例年7月に予定されている学校登山に向け、1年生68名を対象として当保全センター職員による登山マナー等の事前指導を行いました。
屋久島高校の学校登山の目的は、登山に対する心構えやマナーを再確認するとともに、郷土の優れた自然環境や自然と人間との結びつきを考え、環境保護に対する意識の高揚を図るものです。
今回の事前指導では、白谷雲水峡に自生している樹木や屋久杉について、登山に関する基本的なマナーや注意点について、携帯トイレの利点や使用方法について解説しました。その後、職員による携帯トイレの実演も行いました。
事前指導を通じて、生徒たちの登山マナーの向上と自然環境保全への意識を高めることができました。
2024年06月17日(月曜日)
第1回幹事会及びヤクシカWG検討の場の開催
「検討の場」の様子
令和6年度屋久島世界遺産地域連絡会議第1回幹事会及びヤクシカWG検討の場が、鹿児島森林管理署会議室において開催されました。
幹事会の主な議題として、(ア)令和5年度の第2回科学委員会の議論の整理について、(イ)世界遺産地域管理計画に基づく事業実績及び令和6年度事業予定について、(ウ)令和6年度第1回科学委員会の開催について、(エ)モニタリング計画の改定等について、環境省九州地方環境事務所進行のもと、各機関から説明があり、今後の進め方等について議論されました。
世界遺産地域のモニタリング計画の改定に対し、科学委員の皆様から寄せられた意見コメントをどのように反映しながら進めるか、また、各機関が連携・協力できるかなど活発な意見等が出されました。九州森林管理局においては、モニタリング調査項目に関する変更・追加など幅広のコメントに対しては、予算措置等を含め本庁とも検討の上、今後のモニタリング調査に出来る限り反映する方向で検討することとしました。
午後からの検討の場では、7月中旬開催予定のヤクシカWGに報告等行う各議題について検討整理を行いました。令和5年度の各機関の取組状況や令和6年度の取組概要について説明・意見交換等が行われ、特にシカ生息密度調査に関する連携など今後の取組について引き続き確認していくこととしました。
2024年05月22日(水曜日)~6月4日(火曜日)
シャクナゲパトロールを実施
屋久島森林管理署と当保全センターでは、例年登山者が多くなる5月下旬から6月上旬のシャクナゲ開花時期に合わせ、高山植物の盗掘防止と登山者のマナー向上を目的に森林パトロールを実施しています。
1.宮之浦岳
初めて環境省屋久島自然保護官事務所と共同で実施しました。天候にも恵まれたため、50名を超える登山者(内宿泊者13名)がおり、マナー等に関しても問題なく登山をしていました。ヤクシマシャクナゲは多少つぼみを見ることができましたが、ほとんど咲き終わりに近い状況でした。看板や階段の崩壊箇所を環境省職員と確認し、簡易な登山道の補修も行いました。
2.黒味岳
2日間実施し、両日とも天候に恵まれたこともあり、30名以上の登山者を確認することができました。登山者による林内でのガスバーナーの使用が見られました。林野火災に繋がる可能性があるため、落ち葉が多く堆積、または、樹木が頭上を覆っているところでの使用はお控えください。また、空気乾燥時のガスバーナーの使用は特にご注意をお願いします。
3.永田岳
霧が立ち込め、時折降雨もあった中のパトロールとなり、登山者も1名と少ない状況でした。ヤクシマシャクナゲは、ピークを過ぎてはいたものの満開に近い状態で咲いていました。高山植物の盗掘等のマナー違反も見受けられませんでした。
- 登山者の皆様へ
植物や環境保全のため、樹皮を剥ぐ・採取をするといった植物を傷つけること、歩道から外れることのないよう、また、ごみは必ず持ち帰ること、トイレは決まった場所ですること、携帯トイレを携行することにご協力をお願い致します。
なお、植物等に異変を発見した場合は当保全センターへご連絡をお願い致します。
パトロールする職員(左)、宮之浦岳より永田岳を望む(中)、永田岳周辺の開花状況(右)
2024年05月29日(水曜日)
シカ罠を設置
有害鳥獣捕獲として、鹿児島県との協議及び屋久島町の許可を経て、くくり罠を使ったヤクシカの捕獲を当保全センターと宮之浦森林事務所で実施しています。
令和5年度のヤクシカの推定生息頭数は、全体としては前年度より増加していることが、世界遺産地域科学委員会ヤクシカ・ワーキンググループの会議で報告されています。今回、駆除を実施する神之川林道沿いの国有林でもヤクシカによる樹木の皮を剥ぐなどの被害が見られます。
初日は職員全員でくくり罠を仕掛ける場所や仕掛け方、安全対策などを確認し、餌となるカラスザンショウを使って誘引することとして、7箇所に設置しました。
早く適正な生息頭数に近づくよう、そしてヤクシカの食害による森林生態系や農林業への被害が少しでも軽減されるよう取り組みます。
くくり罠を掛ける職員(左)、餌となるカラスザンショウ(右)
2024年05月23日(木曜日)
地元中学生が職場体験学習を実施
屋久島森林管理署では5月21日から23日までの3日間、屋久島町立安房中学校の授業の一環として行われる職場体験学習を受け入れています。
安房中学校では、(ア)実際に働く体験を通して勤労の尊さを肌で感じその意義を理解し、望ましい職業観や勤労観を持たせる、(イ)社会人として自立するための態度や能力を養い、職業や進路選択について考える機会とし、(ウ)地域と社会との繋がりを深め、郷土を愛しその発展に努め、地域社会に貢献する態度を養う目的で職場体験学習を実施しています。
当保全センターでは23日に「屋久島森林生態系保全センターの仕事紹介」と「樹木について」の説明を行いました。
「屋久島森林生態系保全センターの仕事紹介」では、植生・雨量モニタリング、著名屋久杉等の巨樹・巨木の現状把握や入林届について説明を行いました。時折、屋久島の気象やヤクシカに関するクイズや、「屋久島世界自然遺産登録30周年記念シンポジウム」の際に展示をした、屋久杉巨樹・著名木3Dの操作体験をしてもらい、当保全センターの取組について学んでもらいました。
「樹木について」では、普段よく目にしている樹木に親しみを持ってもらいたいという目的で、屋久島署の周辺にある樹木の葉っぱを採取し、当保全センター発行の「屋久島で使える手作り図鑑」で樹木名を調べてもらい、樹木名・科名・葉っぱの形等を用紙に書き込んでもらいました。図鑑には載っていない情報の説明も行ったため、樹木に対しより興味を持ってもらえたと感じています。当保全センターでは、今後も屋久島署と協力して職場体験学習の対応をしていき、森林への理解の醸成等に取り組んでいきたいと思います。
屋久杉巨樹・著名木3Dの操作体験(左)、リンゴツバキについて説明(右)
2024年05月21日(火曜日)
湿原のモニタリング調査
現地調査
花之江河と小花之江河において、九州森林管理局計画課、当保全センター及び調査の業務受託者と合同で現地調査を行いました。
調査内容は、(ア)令和5年度に試行的に実施した対策個所、(イ)地下水位計の増設個所、(ウ)祠土台部分の浸食対策、(エ)東側流路の分散対策、(オ)L字型木道の撤去、(カ)木道等の付け替えルート候補地の選定等について、現地の状況を確認し、今後の保全対策について共有しました。
令和5年度試行的に実施した木柵工による堰については、各堰とも枝条や枯葉等が堆積しており、浸食防止対策につながっているようです。
2024年05月20日(月曜日)
令和6年度屋久島世界遺産地域連絡会議開催
会議の様子
屋久島町議場にて、令和6年度屋久島世界遺産地域連絡会議が開催されました。
会議では、(ア)5年度の事業実績及び6年度の主な事業計画、(イ)世界遺産地域管理計画の改定について、(ウ)世界遺産地域モニタリング計画の改定について、(エ)湿原保全対策について、(オ)世界遺産登録30周年事業の報告等について、各機関から説明がありました。
九州森林管理局からは、令和5年度の事業結果及び6年度の主な事業計画、湿原保全対策等について説明を行い、特に湿原保全対策の中では、局所的に浸食が進んでいる流路への対策として、流路分散対策及び浸食防止対策を実施した結果等について報告を行いました。
各委員からは、管理者不在の登山道に関する進捗状況や遺産地域管理計画書についての意見等が出され、活発な意見・情報交換の場となり会議を終了しました。
今後においても、九州森林管理局としては、引き続き関係機関と連携・協力し取組を進めることとしています。
2024年4月24日(水曜日)
高塚小屋裏側の看板取り替え
高塚小屋トイレ裏の看板
環境省屋久島自然保護官事務所のパトロール時に看板が破損しているとの連絡を受け、新任の奥村所長も着任されたことから、縄文杉等の現地確認と併せて看板の取り替えを実施しました。
高塚小屋のトイレ後ろから先は、立入禁止区域として管理している箇所となります。登山者の方へ注意喚起する看板を設置していますが、経年劣化に伴い支柱が腐朽し、看板が落下していたため、トラロープに看板を取り付けました。このような看板を見かけましら、侵入することなく必ず引き返していただきますよう、登山者の皆様にはご協力よろしくお願いします。
今後も引き続き立入禁止区域及び管理者不在の登山道となっている箇所については、注意看板等の設置を進めていきたいと考えています。
2024年04月19日(金曜日)
湿原保全対策箇所の確認
4月1日付け人事異動で奥村所長が着任したことから、当該業務担当者等と3名で花之江河及び小花之江河の状況を確認しました。当湿原は、平成30年度に保全対策検討会が設置され、自然発生した流路の浸食等を緩和するため、先ず、最初に取り掛かったのが木柵工による試行的保全対策で、奥村所長が当時担当していた業務でもあります。
設置後5年以上経過し、木柵工の上下流側の植生や礫の状態などその機能は果たしていると考えられますが、引き続き追跡調査をしながら必要によっては手直しすることも考えられます。当時、現地資材を活用することが望ましいということから、関係者と連携しヤクスギ倒木の枝等を運搬し設置した木柵工が現在も役に立っていることに感動を覚えました。
自然発生した流路(左)、倒木の枝等を活用した木柵工(右)
お問合せ先
屋久島森林生態系保全センター
ダイヤルイン:0997-42-0331