技術開発・普及の取組
奈良森林管理事務所では、森林の公益的機能発揮に向けた国民の要請に対応しつつ、森林・林業の発展に向けた各種試験研究の実施やその成果等を広く普及啓発を行うための取組を展開しています。
試験研究
・コンテナ苗の普及・低コスト造林を見据えた植栽試験
戦後植栽した人工林が充実期を迎える中、その貴重な森林資源を循環利用していく必要があります。しかしながら、木材価格の低迷などの影響から、主伐・再造林が進まない状況にあることから、再造林経費の大半を占める植栽経費の削減が急務となっています。
そのため、コンテナ苗を活用した伐採と植栽を同時に行う一貫作業システムについて、国有林を中心に取り組まれているものの、普通苗に比べ、コンテナ苗の価格が割高である理由から、民有林での普及が進んでいません。
このような理由から、奈良森林管理事務所では、マルチキャビティーコンテナ苗(2年生)、生分解性コンテナ苗(1年生)※、普通苗(2年生)をスギ、ヒノキ別に植栽し、植栽から下刈が終了するまでの間のトータルコスト、成長量比較を目的とした独自試験を実施しています。得られた成果につきましては、随時公表してまいります。

高取山試験地(コンテナ苗の植栽)

高取山試験地(看板)

桧股試験地

生分解性コンテナ苗
・竹の侵入により生態系が劣化した里山の再生
竹は我が国に広く分布し、従前は身近な資材として、日常雑貨、建築、造園用資材、工芸用品等に利用されてきました。しかしながら、プラスチック等の代替材の普及や、安価な輸入品の台頭によって、竹材の生産は大幅に減少しています。
このような状況に伴って、放置竹林の拡大が進行しており、その影響から、本来あるべき里山の森林が衰退し、森林の有する公益的機能の低下など、森林への影響が懸念されています。また、竹は地下茎により容易に生息域を拡大するため、根絶するのが困難とされています。
このことから、同様の問題が発生している大亀谷国有林のフィールドにて、竹の根絶に向けた試験、広葉樹の植栽などを行い、里山再生に向けた自主試験を展開していきます。得られた成果については、随時公表してまいります。

酢酸を利用した竹の繁茂抑制試験

広葉樹の植栽試験

伐採した竹を利用した遮光処理試験
普及・啓発
・現地検討会の開催
地域における林業の成長産業化に向けた取組として、国有林で実施している伐採と造林の一貫作業システムによる森林整備事業の実施、コンテナ苗の植栽状況、シカ被害対策、ICTを活用した森林管理や治山工事の省力化など、これまで国有林で得られた成果等について、民有林関係者を対象とした現地検討会や報告会を通じた民有林への普及・定着に向けた取組を行っています。
治山事業における遠隔臨場の先進的事例の実演による現地検討会(十津川村)
スターリンクの設置状況
遠隔臨場実演