令和4年度保護林管理委員会の概要
1 開催方法
集合開催(オンライン併催)
日時:令和4年12月7日(月曜日)13:15~16:30
場所:近畿中国森林管理局4階大会議室
2 出席者
委員:(来局)佐久間委員、日置委員、桃原委員
(オンライン)古藤委員、藤木委員、柳井委員
森林管理局:局長、計画保全部長、計画課長、林地保全企画官、計画調整官、企画官、
企画係長、企画係、生態系保全係長、生態系保全係、経営計画官
3 議事
【審議事項】
1 保護林の新設・拡張等について
(1)三川山奥生物群集保護林(仮)の新設
(2)木地屋屋敷・水山ブナ・ナツツバキ希少個体群保護林(仮)の統合・拡張
(3)大越モミ・ツガ・アラカシ等遺伝資源希少個体群保護林の拡張
(4)赤西スギ・トチノキ・シオジ等希少個体群保護林(仮)の新設
2 東中国山地緑の回廊関係
(1)年度別行動計画・現地調査報告等
(2)緑の回廊区域の拡張について
(3)機能類型・施業群の変更等
3 保護林に係る各種事項に関する審議
(1)黒河山スギ・ブナ・ミズナラ等遺伝資源希少個体群保護林で実施する鉄塔建替工事に係る重要種の移植について
(2)榎平山ミズナラ・コナラ希少個体群保護林における電線等支障木の伐採について
【報告事項】
4 保護林・緑の回廊等に係る個別報告事項
5 令和3年度保護林モニタリング調査評価等部会の概要報告
【その他】
4 委員からの主な意見
○三川山奥生物群集保護林(仮)の新設
- 三川山は、兵庫県では氷ノ山に匹敵する規模で天然林が残っており、多様な希少野生生物が生息・生育する特異な植生。また、暖温帯から冷温帯への垂直分布が見られる点も貴重であり、ここを保護林に設定すれば管内の保護対策の進展が期待される。(A委員)
- 垂直分布の全体像が見られる場所は全国的にまれで、それに該当する中国山地の鳥取県三徳山は、数年前に国立公園に編入されている。今回の保護林新設が実現すればそれに匹敵する快挙。(B委員)
- 日本海側では、雪の影響で冷温帯から暖温帯に変わる境界の標高が下がり、常緑広葉樹林から落葉広葉樹林に変わる境界の標高は400~450m辺りとなる。これが観察できる点も新設理由として前面に出した方がよい。また、国定公園と合わせれば高標高地から低標高地までカバーできる点も新設理由の1つの柱になる。(B委員)
- ヒメコマツが分布するような岩礫地や岩尾根はシカ被害が及びにくく、それらをシードソースとして確保することは重要。(C委員)
- 保護林新設予定区域の北側に広がる社寺林や自治体管理の民有林等とも連携し、区域外の低標高地も含めた一体的な保全や情報発信に取り組んでほしい。(C委員)
○木地屋屋敷・水山ブナ・ナツツバキ希少個体群保護林(仮)の統合・拡張
- 水山と木地屋屋敷の既設保護林一帯は、拡大造林前は広範囲に天然林が広がり、元々両保護林はつながっていた可能性が高いので、できれば一体化が図れるよう更に検討してほしい。(A委員、B委員、D委員)
- 南側の本谷奥国有林にも大規模な天然林が分布するので、保護林に追加できないか検討してはどうか。(A委員)
〔事務局からの事務局からの回答〕
既存保護林や拡張予定区域の周辺天然林を精査して、一体的な保全・管理が図れるよう区域を設定するともに、令和5年度には、本谷奥国有林の現地調査も行い、適当であれば拡張区域への追加等を検討したい。
- 過去にはたたら製鉄の稼働により伐採圧が高かったと思われるが、なぜこのように天然林が残っているのか歴史的経緯も興味深い。(A委員)
○大越モミ・ツガ・アラカシ等遺伝資源希少個体群保護林の拡張
- 令和2年度から調査方法を踏査主体に変更したことで、トガサワラのような生育密度の低い種が見つかるようになって良かった。(A委員)
- 太平洋側の植生の垂直分布が見られる保護林設定となっており、特にトガサワラを含む植生帯である点においても貴重。引き続き国立公園と連携し保全対策を進めてほしい。(C委員)
○赤西スギ・トチノキ・シオジ等希少個体群保護林(仮)の新設
- シオジの生育と老齢のスギがまとまって分布する点は、保護林新設の十分な根拠となる。ここも過去にたたら製鉄が稼働していた地域であるにもかかわらず、現在そのような老齢個体群が残存する歴史的経緯は興味深く、その解明は当該個体群の価値付けにつながる。(A委員)
- シオジは鳥取県でもレッドデータブック記載種で、オヒョウの分布もまれであり、このような場所は貴重。また、ケヤキが当地のような高標高域に分布しているのは貴重。(B委員)
○東中国山地緑の回廊関係
- 平成18年度の当回廊設定時から委員として関わってきたが、拡張は初めてで、画期的な取組。今回の拡張でブナ林が増えることや、回廊の区域が北側へ延びる点も望ましい。(B委員)
- 当回廊は、この地域のOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)を束ねる主軸となり得るので、回廊内のみでなく回廊外も見据えて対応に当たってほしい。(C委員)
- 大山の鏡ヶ成国有林における混交林化の取組では、鳥取署が実施する択伐の選木方法についてアドバイスを行った。学会発表資料があるので、当回廊での施業の参考に活用してほしい。(B委員)
○黒河山スギ・ブナ・ミズナラ等遺伝資源希少個体群保護林で実施する鉄塔建替工事に係る重要種の移植について
- 移植対象が1個体のみの場合、リスクを考慮し一旦増殖してから移植した方がよいのではないか。(E委員)
〔事務局からの回答〕
移植対象が1個体の場合も、移植先を含む周辺地域には同種個体の分布を確認しており、今回は増殖等の対策は取らない旨を後日回答済み。
○榎平山ミズナラ・コナラ希少個体群保護林における電線等支障木の伐採について
- 特に意見はなく了承された。
○夜叉ヶ池ヤシャゲンゴロウ希少個体群保護林内倒木箇所への植生マットの設置について
- ヤシマットの敷設で植生の回復は遅れるのではないか。例えばギャップの早期解消のための山採り苗の移植などであれば、1つの選択肢としてあるかもしれないが、土砂流出量が分からないと評価はできないが、山腹崩壊が起きるような状況でなければ一般的にはマットは不要ではないか。(C委員)
- 近年マットの敷設は多用されつつあり、重力散布や鳥散布種子が捕捉されやすくなるものの、遺伝的かく乱の心配はないと思う。一般的にはあまり必要ないと思うが、池の水の混濁防止が目的であれば、敷設のデメリットもないのでは。また、通常は人工的な法面緑化等に使われるものであり、ギャップのように自然の凹凸がある場所では自然に種子が留まるため、マットは不要な場合もあり、ケースバイケース。(B委員)
○黒河山国有林内の湿地とその保全対策について
- 一般に湿原は貧栄養な環境であるが、シカの糞や足跡も確認されており、糞による富栄養化が湿地へのダメージとなる可能性もある。設置を前提に、どのような防護柵を設置すべきか検討してほしい。(B委員)
- 防鹿柵は張ってほしいが、多雪地で管理が大変なので、全域を囲うのではなくパッチディフェンスとして設置するのでよい。当湿地が分布の西限付近となっている種もあるため、そのような種の過去に株があった位置が分かれば囲ってほしい。(A委員)
○釜ヶ峰アベマキ・アカマツ遺伝資源希少個体群保護林で実施したナラ枯れ被害対策と今後の管理方針について
- 隣接地にアベマキを主体とした林を育成するかどうかも含め、中長期的な視点での検討が必要。天然記念物と同様、保護林の更新、次世代の森林育成は難しい課題であり、関係機関との情報交換が重要。(C委員)
○滑山アカマツ・ブナ・コナラ等遺伝資源希少個体群保護林における今後の取組予定について
- 既設保護林内での更新は困難であり、事務局説明にあったように、保護林の隣接地における次世代林の誘導を検討すべき。(C委員)
- マツなので菌根や土壌が影響している可能性は高く、土壌環境が変わるとマツが侵入しても育ちにくいことはあり得る。ヒノキ林の林床でマツが再生しているところがあるのであれば、光環境について十分に検証した上で、慎重に施業をするべき。(D委員)
○その他(令和3年度保護林モニタリング調査評価等部会の開催概要)
- 白山地域のシカについては、手取川周辺にはかなり前からシカの侵入があり、地元の白山自然保護センターなども精力的に調査を実施しているため、情報を取って対策の参考にすべき。(F委員)
5 資料一覧
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計画保全部 計画課
担当者:森林施業調整官
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