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東北森林管理局

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    庄内森林管理署

    「署長が語る!」

                      平成30年10月
    庄内森林管理署
    署長  木村 和久

     

    1  概要
      当署の国有林は、山形県の北西部に位置する庄内平野の外側に位置し、北は鳥海山(2,236m)、東は月山(1,980m)、南東に以東岳(1,771m)、南に大鳥岳(989m)、摩耶山(1,020m)など、鳥海山系、出羽丘陵、朝日山系の山々に囲まれた2市2町(酒田市、鶴岡市、遊佐町、庄内町)に所在し、森林面積は約92.4千㏊で、当該市町村の土地面積の約4割となっています。
      鳥海山、羽黒山、月山、湯殿山などの山頂及びその周辺は神社所有の土地となっており、山岳信仰の歴史が古く、観光客など多くの方が訪れます。
      日本海に面した西側には庄内砂丘があり、北は遊佐町吹浦から南は鶴岡市湯野浜に至る延長約34km、幅1.5~3.5kmで、その面積は7千㏊と日本有数の規模の砂丘を形成しており、そのうち国有林の面積は約833haとなっています。

                       鳥海山                      羽黒山五重塔と翁杉                         庄内海岸林





    2  庄内海岸林(海岸林の歴史)
      庄内地域の海岸は中世頃までは、うっそうとした森林で「柏木山」とも言われたとのことです。
      以前勤務していた北海道の宗谷地域は強風で有名ですが、海岸林の最前線が100年生ぐらいの低木のナラ類(葉の形状はモンゴリナラ)で構成されている地域があり、カシワなどナラ類は海岸の厳しい環境に強いと考えられます。
      「柏木山」は、戦国時代の戦火、製塩のための薪の利用のための伐採などにより荒廃し、江戸時代中期の宝永4年(1707年)、藩政改革により林の伐採に規制をかけるとともに、藩から「植付役」として植林の任を受けた先人がクロマツの植林を試みたのを始まりに、その後も藩の「植付役」や私財を投じた先人たちが植栽を行いました。場所によっては子孫に引き継ぎながら植栽しては砂に埋もれ、延享年代(1744年~1748年)には、複数の村そのものが失われるほどの状況になった地域もあると言われております。
      不屈の精神で取り組んだ多くの先人たちの努力により、江戸時代の中期頃には東部砂丘は安定し、西部(海岸前線)まで工事の範囲を広げました。
      明治以降、これら植林された海岸林は、一旦、官有となりましたが、植付け縁故の人々に多くの海岸林の所有が戻され、西部砂丘は県営事業として砂防工事を続けるとともに、民有地の一部を官有に組替え、あるいは内務省から農林省に所管換え等により事業が進められました。しかし、第2次世界大戦前後、海岸林の放置に伴い荒廃が進み、既成のクロマツ林、田畑、家屋が埋没するまでに至り、昭和25年民有地300ha余りを採納して翌26年から本格的に事業を開始し、32年を経た昭和54年末までに584haの植林を終え、平成28年度末現在、海岸林の人工林面積は674haに及んでいます。

                     昭和20年代の庄内砂丘           昭和20年代の砂に覆われた民家
                                    覆砂工              クロマツ植栽(昭和35~36年)





    3  庄内地域の松くい虫被害
      庄内地域の松くい虫被害は昭和54年に民有林で初めて確認されました。国有林では昭和63年度に7m3の被害が初めて確認されましたが、平成11年から被害量が増大し、平成14年度、民有林で11.6千m3、国有林で4.3千m3の被害となりました。その後、減少傾向となっていましたが、平成26年度民有林で14.6千m3、国有林で2.5千m3と被害量がさらに拡大し、平成28年度、民有林で23千m3、国有林で8.2千m3と過去最大の被害量となりました。平成29年度には国有林で2割、民有林で3割ほど減少しましたが、被害量は引き続き高く、緊張感を持った対応が必要となっています。これら被害木対策として、被害木の燻蒸処理、破砕処理、地上散布などを行っています。なお、これら被害のほとんどが海岸林での被害となっています。

                           燻蒸処理                            破砕処理                           地上散布





    4  生活を守る
    (十二滝治山工事)
       十二滝治山工事は、レクリエーションの森の一つである風景林の「経ヶ蔵山・十二滝」に通じる市道(滝の茶屋~十二滝)沿線の国有林の崩壊に伴う災害復旧工事で、平成29年度から工事に着手し、平成30年度工事完了の予定です。
       大小12の滝から構成される十二滝は酒田市の観光スポットとなっており、早期の復旧が求められておりました

     
                          十二滝治山工事崩壊現場(崩壊上部)         十二滝治山工事崩壊現場(市道付近)
       
         上部岩盤:GTフレーム施工中、下部右側:土留工                   補強土植生のり枠工         下部斜面:緑化工及び鋼製枠土留工



    (風景林の「経ヶ蔵山・十二滝」)
      経ヶ蔵山の山麓にある十二滝は、周辺の森林と調和し、優れた景観となっています。
      山頂付近にある経塚は、南北朝時代の僧、玄翁(源翁)が、弥勒菩薩が仏法を説く時代に備え、経典を岩窟を利用して保存していると言われ、山形県の史跡にもなっています。

       
                十二滝                            経塚



    (海岸林の保全)
      これまで砂丘の造成、防風垣の設置、砂草植栽、クロマツの植栽など多くの作業種を組み合わせ、海岸林の造成を進めてきました。平成30年度、松くい虫被害が多かった区域について、地拵・植付け0.61ha、下刈2.37ha、つる切37.21ha、砂草追肥9.03haを実施します。前年度、植栽を実施した箇所では、防風垣及び個々の植栽木を風害から守る衝立(ついたて)工を併用して施工しています。また、事業体が行っている砂草植栽試験にも協力し、緑化技術の向上にも努めています。

         
                     丸太防風垣(1132林班)                    クロマツ植栽(衝立工)              クロマツ植栽全景(左側防風垣)




    5  自然に親しむ(万里の松原に親しむ会)
      「万里の松原に親しむ会」は、レクリエーションの森(「万里の松原」自然観察教育林)の松陵地区を活動拠点とするボランティア団体で、団体会員14、個人会員約100名で活動を行っています。
      海岸防災林の保全や環境整備、学校の森林環境教育活動への支援などを主な活動としていますが、平成25年2月、仙台森林管理署と「万里の松原に親しむ会」が「社会貢献の森」協定を結び、仙台森林管理署が管理する国有林約0.11haにクロマツなどの植栽を行っております。平成26年には「林野庁長官感謝状」、「山形県緑化等功労者感謝状」、「酒田市民賞」、「ソロプチミスト日本財団社会ボランティア賞」の4つの賞を受賞しています。
      「万里の松原に親しむ会」の活動は、「万里の松原」が市民の憩いの場としての維持される一翼を担っています。

           
                酒田中央高校下刈              植樹場所への移動            小学生による枝打ち           枝打ち作業の前の風景





    6  森林・林業の成長産業化
    (国有林における森林整備)
        当署国有林の人工林面積は約12千haで、森林に占める人工林の割合は約1割で、東北管内の森林管理署の中でも低い割合となっています。
        海岸林以外の国有林は、奥山に成立しており、生産した木材の輸送には広大な庄内平野に整備された市町村道、農道等の路網の利用頻度が高く、地域と調整を図りつつ、森林整備を進めていくことが重要です。また、昭和の時代及び平成の初期の頃までは、架線集材が主流でしたが、現在は路網密度を高め、高性能林業機械を利用した施業となっています。架線集材であれば搬出できた林分も路網整備を進めるには厳しい立地条件の場合もあり、タワーヤーダーなど架線系の高性能林業機械の普及も必要でないかと考えています。

         
                  伐倒(チェンソー)                集材(グラップル)               造材(プロセッサ)              運材(フォワーダ)

     

    (木材の需要)
      木材需要については、鶴岡市にある鶴岡バイオマス発電で燃料用の原木5万m3、新庄市にある協和木材が集成材用の原木12万m3の需要があるほか、羽越木材協同組合でラミナ生産用の原木3万m3、酒田市のサミット酒田パワーで燃料用の原木16万トン(約20万m3)の需要が見込まれるなど、木材需要の高まりにより、今後、当署の立木販売も素材販売も好調になることが期待されます。

    (民有林の動向)
      民有林の人工林面積は37.5千haで国有林の約3倍となっていますが、民有林は小規模・零細な森林所有者が多くなっています。平成27年の農林業センサス(農林業経営体調査)では、山形県内の林家は19,351戸、103,451haで、そのうち所有山林が1~3ha未満の林家は11,513戸、18,726haとなっており、林家数で約6割、面積割合で2割となっています。少し古いデータになりますが、0.1ha~1ha未満の森林所有者を把握していた平成2年の農林業センサスでは、山形県内の林家は46,521戸で、そのうち0.3ha~1ha未満の林家は25,160戸で、林家数で5割となっておりました。平成2年当時の森林の所有構造と大きく変わっていないと考えているところであり、山形県内の民有林の森林所有者は1ha未満の森林所有者が半数を占めていると推測しております。民有林においては、小規模・零細な森林所有者の集約化が課題と考えています。
      平成29年12月に決定された平成30年度税制改正大綱で、平成31年度から森林環境譲与税が、平成36年度から森林環境税が導入されるとともに、平成30年5月に森林経営管理法が成立するなど、民有林の森林整備を推進する仕組みの基礎ができたところです。

    7  自然を守る
       当署管内国有林の天然林面積は70.3千haで8割を占めています。そのうち、朝日山地森林生態系保護地域が23.2千㏊、月山生物群集保護林が5.4千㏊、鳥海山生物群集保護林が4.7千㏊、女鹿タブ遺伝資源希少個体群保護林6.09ha、八間山クロマツ遺伝資源希少個体群保護林12.04haがあり、森林生態系保護地域ではモニタリング調査による継続的な観測や記録が行われております。また、鳥海朝日・飯豊吾妻緑の回廊が9.8千㏊となっています。

           
        朝日山地森林生態系保護地域            月山生物群集保護林         鳥海山植物群落区保護林  女鹿タブ遺伝資源希少個体群保護林 
                     (以東岳)                 (ニッコウキスゲ)  

     

    お問合せ先

    林野庁 東北森林管理局 庄内森林管理署
     〒997-0015
     山形県鶴岡市末広町23-37

     電話IP:050-3160-5845/一般:(0235)22-3331
     FAX:(0235)22-3333