遠野支署のみどころ
岩手の仙人峠
岩手県遠野市 |
岩手県盛岡市から釜石市に至る国道の通称である遠野街道(396号線)及び釜石街道(283号線)は、遠野市を中継点として藩政時代には既に整備されておりました。
街道は江戸の時代より岩手県の内陸部と沿岸部を結ぶ主要道として盛んに人の往来があった訳ですが、行き交う人馬を苦しませたのが街道最大の難所である「仙人峠」の存在でした。
仙人峠は、遠野市と釜石市との境にある山々の稜線上に位置します。
「遠野物語」にも登場する仙人が住んでいた山であることから仙人峠と命名されたと一説にありますが、この峠は難所であるのみならず当時の人々にとっては畏怖の対象でもあったであろうと、場に漂う雰囲気から感じられます。
峠の頂の一角には石造りの頑丈な祠が祀られておりますが、遠野はかつて様々な妖怪や魑魅魍魎の類いが現れたと伝えられる土地柄でもあり、そこでは旅する人々の無事な往来が真剣に祈願されていたことでありましょう。
ちなみに遠野物語には、次のような記述があります。
「夜、この山道にて若き女の髪を垂れたるに逢えり。こちら見てにこりと笑ひたり。」
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「仙人峠」遠野側の登り口 | 峠の頂へと続く山道 | 山頂に鎮座する石の祠 |
時を経て戦後を迎え、遠野と釜石を結ぶ鉄道釜石線の全面開通、国道283号線の開通、そして東北自動車道と三陸道を繋ぐ自動車専用道路「釜石道」の開通があり、仙人峠を越える道は交通手段としての役割を終えました。
仙人峠への登山道は、国道283号線「仙人トンネル」遠野側入り口駐車スペースの近くにあります。
そこから祠のある山頂まで行くためには、登山道を歩いて一時間半ぐらいを要しますが、路面は今でも堅固で道筋もしっかりとしており、交通の要だった頃の長い歴史が偲ばれます。
登山道は国有林の中を通っていますが、道の両端には官民地境界標識が随所に埋め込まれており、古くからいわゆる「赤線」扱いであったことを示しています。
地域と地域を繋ぐ役目を果たし終えた今となっては、ほぼ地元の方々からも忘れ去られてしまい、平素から全く人の気配のない寂しい峠道ではありますが、軽いトレッキングコースとしては格好のルートです。
いにしえの人々が汗を流しつつ行き来した時代に思いを馳せながら、のんびりと峠道を歩いてみるのも一興かも知れません。
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岩手南部森林管理署遠野支署
電話番号:0198-62-2670
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