R6 洋上アルプス

2025年02月25日(火曜日)
安房小学校にて森林教室を実施
安房小学校5年生26名に対して、屋久島森林管理署及び当保全センターで森林教室を実施しました。
当日は、教室内で「植物の名前当てクイズ」、「森林の多面的機能」、「森林官の仕事」についての講義と「シカと森のカード」というシカと生物多様性について学べるカードゲームを行いました。
まず、アイスブレイクとして「植物の名前当てクイズ」を実施しました。屋久島に生えている樹木を選定し、3択の中から答えを選んでもらいました。正答率が高い樹木もあり、児童の樹木への関心が見られるとともに、とても盛り上がり良いスタートになったと思います。
「森林の多面的機能」についてはクイズやイラストを交えながら、森林と私たちの生活との関わりやヤクシカの現状の説明を行いました。実物のくくり罠を紹介した時は、とても興味を示しており、その後の休憩時間でも多くの質問がありました。
「森林官の仕事」では、現役森林官が、一日のスケジュールを中心に仕事内容についての講義を行い、全く知らなかった森林官という職業について知ってもらう良い機会になったと感じています。
休憩後は、「シカと森のカード」を実践してもらいました。このカードゲームは、森を構成する動植物と、増えすぎると森へ被害を及ぼすヤクシカを捕獲する組織や道具のカードをめくりながら健全な森づくりに挑戦するものです。児童は、カードをめくるたびに一喜一憂し、時にはシカのカードをどう調整するか皆で話し合いながら学び、ゲーム終了後どんな「森」になったか発表してもらいました。
実施後のアンケートで、森林官、森林や林業に興味を持ってくれる児童もおり、充実した森林教室になったと感じています。
当保全センターでは、様々な森林教室を実施しているので、「こんな森林教室をお願いしたい」ということがありましたら、ぜひご相談ください。
クイズに答える生徒(左)、森林官の話に真剣に耳を傾ける(中)、盛り上がった「シカと森のカード」(右)
2025年02月19日(水曜日)
植生保護柵の補修
島内の国有林23箇所にヤクシカによる食害を防ぐため植生保護柵を設置し、植生の回復状況等をモニタリングしています。台風等による倒木で保護柵の破損が発生することから、毎年、委託による保守・点検を実施し、今年度も数箇所で破損していることが報告されたので、まず、平瀬国有林のカンカケについて、職員による補修を実施しました。
カンカケ岳から西部林道にかけて設置された植生保護柵の、標高550m、400m、200m地点において、植生保護柵に倒れ掛かる倒木の幹や枝の処理、倒されたネットの補修等を行い、柵内にヤクシカが入りプロット内の植物を食害することでモニタリングに影響を及ぼさないようにしました。特に、400m地点では胸高直径が80cm程度のイスノキ2本が保護柵を巻き込む形で根返りし、樹冠も保護柵を押しつぶす状態だったため、枝条等を整理して、新たにネットを張り直しました。
当保全センターとしては、適切なモニタリングが継続されるよう今後も、植生保護柵の点検・整備を確実に実施していくこととしています。
被害状況(400m地点)(左)、ネットの張り直し(中)、倒木処理後(200m地点)(右)
2025年02月16日(日曜日)
令和6年度ふるさとセミナー Forestdayへ参加
公益財団法人屋久島環境文化財団が主催する「Forestday」は、「森と人との関わり」をテーマに様々な団体と協働し、森と人が織りなす持続可能な循環から「共生と循環」の文化を様々な団体と共創して、島民に広く普及することを目的としています。
屋久島環境文化研修センターにおいて開催され、当日の参加者は約70名。当保全センターは屋久島森林管理署と共同で、竹とんぼ作り及び丸太切り体験を実施しました。
竹とんぼ作り体験では、あらかじめ準備した羽と軸を参加者に選んでいただき、紙やすりでより飛ぶように調整し、カラーペンで名前や模様を書いたり色を塗ったりし、思い思いの竹とんぼを作り上げていました。数名は、小刀を使い、削る前の竹から竹とんぼを作っていただきました。自身で一から削ることにより、作成した竹とんぼに愛着が湧くということでとても好評でした。完成した状態の竹とんぼも20個ほど持っていきましたが、思っていたより人気があり、半分以上無くなってしまいました。
丸太切り体験では、参加者にスギ等の樹木をノコギリで好きな幅に輪切りにしてもらい、紙やすりで磨き、カラーペンで名前や模様を書き、世界に1つだけのキーホルダーを作ってもらいました。苦労して伐った丸太を自身の手で加工しキーホルダーを作れたということで、こちらの体験もとても好評でした。
他にも、環境省や屋久杉自然館、木繋プロジェクト、主催の屋久島環境文化財団といった参加団体より、土の中の生き物観察会、ポストカード作り、屋久杉クラフト体験などたくさんの催し物が実施され、盛りだくさんの1日となりました。
思い思いの竹とんぼを作製(左)、選んだ樹木を輪切りに(中)、参加者が作製したキーホルダー(右)
2025年02月14日(金曜日)
榕城小学校で森の学習会を実施
種子島ヤクタネゴヨウ保全の会より要請を受け、西之表市立榕城小学校5年生(78名)を対象に、屋久島森林管理署と共同で森の学習会を実施しました。
前半は当保全センターと屋久島森林管理署で3つの講義を行いました。1つ目はアイスブレイクとして行った「植物の名前当てクイズ」です。種子島に実際に生えている樹木を5種選定し出題しました。児童はとてもいい反応をしてくれて、緊張をほぐすことができました。2つ目は「葉っぱの色々」と題し、落葉樹と常緑樹の葉っぱの違いについて実物を見ながら説明するとともに、アコウと榕城小の関係についても講義し、より身近に感じてもらうことができました。3つ目は「種子の広がり」についてです。風、水や動物によって樹木は生息域を拡大していることやヤクタネゴヨウはそれとはまた違う散布方法だということを学んでもらうことができたと思います。
休憩時間には空飛ぶ種の模型(アルソミトラ・マクロカルパ種)を配布したり、講義の中で登場した種子島に生えている樹木等を見てもらったりと実物に触れて体験してもらうことができました。
後半はヤクタネゴヨウ保全の会が講義を行い、絶滅危惧種であるヤクタネゴヨウの利用の歴史や保全活動の取組み、松枯れの原因であるマツノマダラカミキリやマツノザイセンチュウに関して説明がありました。木の中にマツノマダラカミキリの幼虫が侵入しているところを見ることができ、貴重な経験になったと思います。
今回の学習会を通して、少しでも森林やヤクタネゴヨウを含む様々な樹木に興味を持ってくれたら嬉しいです。
「種子の広がり」について説明(左)、樹木に触れて体験(中)、大人気の種の模型(右)
2025年02月13日(木曜日)~14日(金曜日)
屋久島世界遺産地域科学委員会等を開催
令和6年度第2回屋久島世界遺産地域科学委員会とヤクシカ・ワーキンググループ及び特定鳥獣保護管理検討委員会合同会議が、2日間にわたり鹿児島市宝山ホールにおいて開催されました。
- ヤクシカ・ワーキンググループ及び特定鳥獣保護管理検討委員会合同会議の概要(02月13日)
会議では、(ア)ヤクシカの生息状況等について、(イ)捕獲等の被害防止対策について、(ウ)森林生態系の管理目標及びその他植生モニタリング等について、(エ)特定エリア(西部地域)の対策について、(オ)屋久島世界遺産地域モニタリング計画の改訂について、6年度の実施結果や7年度の事業計画が関係機関より報告され議論が行われました。
ヤクシカの生息状況について、推定個体数は島全体として令和4年度から5年度にかけては増加したが6年度にかけては減少しているとの報告があり、委員及び現場の意見を踏まえ、減少傾向の位置づけとなるが、今後、注視していく必要があるとのことでした。また、最近タヌキの目撃も多いことから、生態調査等が必要ではないかとの意見も出されました。
植生モニタリングについては、植生保護柵内外の植物出現種数の推移等から回復状況にあるのではないかという意見や、大きな台風通過後は保護柵の点検・補修等をしっかり実施してモニタリングに支障の無いようにすることが重要との意見などが出されました。
- 屋久島世界遺産地域科学委員会の概要(02月14日)
委員会では、(ア)前回会議の議論整理、(イ)令和6年度世界遺産地域モニタリング調査等結果の概要、(ウ)令和7年度世界遺産地域モニタリング調査等計画、(エ)令和6年度第2回ヤクシカ・ワーキンググループ及び特定鳥獣保護管理検討委員会合同会議、(オ)屋久島世界遺産地域モニタリング計画の改定、(カ)屋久島湿原保全対策、(キ)その他として、弥生杉の今後の取り扱い等が報告され、各項目ごとに議論されました。モニタリング調査については、西部地域WGやし尿処理検討部会等の資料を出してほしいとの意見が出されました。また、委員の若返りについては、事務局のサポートやケアの必要性、開催時期の検討等、活発な議論が行われました。
ヤクシカ・ワーキンググループ及び特定鳥獣保護管理検討委員会合同会議(左)、科学委員会で挨拶する橘九州森林管理局長(右)
2025年02月05日(水曜日)
弥生杉コース(白谷雲水峡)通行規制解除(R7.02.05解除)
台風10号の影響を受け通行規制を行っていた白谷雲水峡の「弥生杉コース」については、弥生杉周辺の環境整備(倒伏した弥生杉周辺の枝条整理や折損木等の除去、保護柵設置、う回路整備、看板設置)及びコース全体の整備[危険木処理(枯損木、倒木、折損木)、崩土除去、歩道の補修・整備]を行い、先ずは、通行可能な状況となりましたので、令和7年2月5日(水曜日)から、通行規制を解除することとしました。
令和6年8月末の弥生杉倒伏以降、屋久島の各行政機関や有識者等の皆様方を構成員とした検討会等を開催し、今後の取扱いに係る方針を決め環境整備を行って参りました。約5ケ月の間において環境整備等を進める中では、レクリエーションの森保護管理協議会、屋久島町、環境省、請負事業体やガイドの皆様方から貴重な情報やご意見等いただき感謝いたします。
弥生杉は、先端部を含め半分程度が白骨化した状態となっていました。白骨化した部分が旧歩道際に倒れていますが、新しく設置した歩道から間近に観察できますし、倒れた本体も既設歩道から観察することができます。令和7年3月まで、木製デッキの設置や既設歩道からデッキへ連結する歩道の整備を行うこととしていますので、完成後は、更に近い箇所から観察できることになると考えています。
弥生杉コースの通行規制は解除されますが、白谷雲水峡等を観光される際には、足下に十分ご注意いただくとともにルールやマナーの遵守をお願いします。
当保全センターとしては、今後も地域のニーズや課題等に対し、関係者等と連携し積極的に取り組むこととしていますので、引き続きご理解とご協力をお願いします。
さつき吊り橋方面へは立入禁止(左)、ルールやマナーを守りましょう(中)、弥生杉看板の新設(3月中旬披露)(右)
2025年01月16日(木曜日)
弥生杉倒伏に伴う周辺環境整備状況
白谷雲水峡にある弥生杉が倒伏したことから、有識者及び関係機関等を構成員とした「弥生杉の取扱いに係る検討会」を設置し、今後の取扱いについて確認しました。検討会の方針としては、次の世代に繋げる森林環境教育の場や観光資源として活用するため、基本的にそのままの状態で現地に存置することとなりました。(12月9日 当保全センターHP検討結果のお知らせ)
取扱い方針が確認・公表されたことから、周辺の環境整備等について着手しましたので、その現況についてお知らせします。
方針を踏まえ、弥生杉周辺の折損木等を含めた枝条整理の実施、倒伏した弥生杉本体周辺へのシカ侵入防護柵設置、遊歩道の再整備、看板等の設置を実施しています。周辺の枝条整理等を実施したことから歩道からも倒伏した弥生杉の状況を観察することも出来ます。
また、既設歩道の一角に弥生杉先端部が落下し破損したため、環境省等からの歩道整備情報を基に「近自然工法」を取り入れ、工法に詳しい屋久島のガイドの方を中心に整備に取り組むなど、請負者(ガイド等含む)及び屋久島レクリエーションの森保護管理協議会、屋久島森林管理署、当保全センターなど連携・協力し周辺環境整備を順次進めている状況です。その結果、12月末に一部が完了しました。1月上旬の寒波により県道通行止めの影響で遅れ気味ではありますが、2月上旬迄には枯損木の処理や看板等の設置を行う予定としています。
倒伏前までは、弥生杉の根元近くまで行き観察が出来ましたが、既設歩道の真上に倒伏し観察困難となったため、年度末に向け、木製デッキを防護柵付近に設置するとともに、既設歩道から連結させる歩道を検討しています。
弥生杉ルートの早期規制解除に向け、関係機関等と情報を共有し取り組んでいるところです。一般観光客の方へは、今暫くの間、お待ちいただきますようお願いします。なお、解除予定日が決定次第、当保全センターHPにおいてお知らせします。
迂回歩道からの風景(防護柵越し)(左)、既設歩道からの風景(折損部望む)(中)、新設歩道迂回路(近自然工法)(右)
2024年12月04日(水曜日)
屋久島世界遺産地域連絡会議第2回幹事会・ヤクシカWG検討の場を開催
令和6年度 屋久島世界遺産地域連絡会議第2回幹事会及びヤクシカWG検討の場が、鹿児島森林管理署会議室において開催されました。
幹事会の主な議題として、(ア)令和6年度の第1回科学委員会の議論の整理について、(イ)令和6年度第2回科学委員会の開催について、(ウ)世界遺産地域モニタリング計画の改定について、(エ)湿原保全対策について、(オ)その他について、環境省九州地方環境事務所進行のもと、各機関から説明があり、今後の進め方等について議論されました。世界遺産地域のモニタリング計画の改定に対しては、科学委員の皆様から寄せられた意見コメントに対して、意見回答をどのように反映しながら進めるか、活発な意見等が出されました。
九州森林管理局からは、令和6年度に実施した湿原保全対策の概要説明がありました。1つ目に、令和5年度に実施した浸食防止対策及び流水分散対策のモニタリング、2つ目に浸食対策の追加、3つ目に地下水位計の増設について概要説明がありました。その他の中で、科学委員会設置要綱の委員年齢について、前回の科学委員会で出された「年齢見直しを」との意見に対して、各出席者から、次回の委嘱手続き内に整理ができるよう意見が交わされました。
ヤクシカWG検討の場では、(ア)「令和6年度第1回ヤクシカWG合同会議における主な助言・意見等に対する今後の取組方向」の確認、(イ)令和6年度九州森林管理局委託事業、(ウ)令和6年度環境省の取組状況、(エ)屋久島世界遺産地域モニタリング項目等(案)、(オ)モニタリング計画改定に関する意見について、関係機関より報告があり、意見交換が行われ、来年2月に開催予定のヤクシカWGへの報告内容等が整理されました。
湿原対策について説明(奥村所長) (左)、検討の場で挨拶(九州森林管理局 松永保全課長)(右)
2024年11月28日(木曜日)
中央中で森林教室を実施(3回目)
中央中2年生52名に対して、屋久島森林管理署と当保全センターにて森林教室を実施しました。
この森林教室は、林業への理解を目的として、林業の流れが体系的に学べるよう、様々な森林施業内容について体験を交えながら、卒業までの3年間で一巡する森林教室を試行的に行っているものです。3回目となる今回は、屋内では森林の管理・森林施業・屋久島と戦争の関わりについての講義と屋外では収穫調査体験を実施しました。
はじめに当保全センター奥村所長より全体を総括し、「屋久島世界自然遺産地域~保護地区と森林整備地域~」と題し、屋久島世界遺産地域管理計画や屋久島憲章等を交えながら、保護と利用の両立、森林整備の土台となる前岳部分人工林地帯)の重要性について講義が行われました。その後、クラスごとに分かれ、引き続きの講義と収穫調査体験をそれぞれ行いました。
引き続きの講義では、クイズや写真を交えながら、森林の機能類型や森林施業の内容について説明を行いました。1、2回目の森林教室の振り返りをしながら、より踏み込んだ説明を行いました。また、学校からの要望で、屋久島と戦争の関わりについて、当時の写真と現在の写真を見比べながら説明を行いました。生徒は初めて知る情報に驚きながら、身近に残る当時の面影を感じてくれたのではと思います。
収穫調査体験では、初めて使用する輪尺や測悍の使い方のアドバイスをもらいながら、中庭にある樹木の胸高直径と樹高を測定し、材積を算出しました。材積から測定木の価格についても話すことができ、より詳しい学習に繋がったのではと思っています。
来年度には、全体のまとめとなる4回目の森林教室を行う予定です。
講義の様子(所長)(左)、調査方法について説明(中)、輪尺を使用して収穫調査体験(右)
2024年11月28日(木曜日)
(株)竹中工務店が屋久島地杉の取組について来島
(株)竹中工務店設計本部からの依頼を受け、当保全センター会議室において同社の20代及び30代の若手設計者17名に対し、屋久島の森林・林業全般における現状と課題、当保全センターの概要等について、当保全センター奥村所長より講義を行い意見交換を実施しました。
今回は、同社が取り組んでいる森林グランドサイクルや持続可能なまちづくりと共感する部分が多くある屋久島の地杉活用等について、インターネットや各文献から得られる情報より一歩踏み込み、現地で触れて体験し屋久島の方々から情報を得たいと来島されたものです。
また、当保全センターHP「洋上アルプス306号」に掲載の「屋久島の林業・木材産業を知る」から情報を得て依頼があったことから、屋久島町役場林務担当者と連携し取り組むこととし、先ずは、屋久島町の木造庁舎建築に関する地杉加工・利用の事例や木材加工センターでの加工・販売など紹介していただき現地でヒアリングされました。
当保全センターでは、最後の現地ヒアリングとして1時間程度の限られた時間でありましたが、「洋上アルプス」へ掲載した概要及び同社からのヒアリング項目等を中心に説明し、最後に台風10号により被害を受けた「弥生杉」についても触れ、屋久島における森林生態系の保全と利用、森林・林業の現況と課題等について幅広く説明し意見交換を実施しました。
若手設計者の皆様も自ら探しての屋久島ヒアリングであり、質問等も生態系や地杉の生産・販売・加工はじめ屋久島の現状等について幅広く出されるなど、屋久島に対する関心の高さを感じました。屋久島の木材が次のステップへと変化し、屋久島の活性化につながることを願っています。
当保全センターとしては、外部からの依頼も積極的に受入れ、関係機関等と連携し取り組み、屋久島での様々な取組を「洋上アルプス」において発信していきたいと考えています。
概要等の説明(所長)(左)、質問・意見交換の様子(中)、屋久島町役場 木造庁舎の説明 (提供:竹中工務店)(右)
2024年11月26日(火曜日)
安房中学校にて森林教室を実施
安房中学校1年生23名に対して、当保全センター及び屋久島森林管理署で森林教室を実施しました。
当日はあいにくの天候だったため、教室内で校庭に植栽されている樹木の学習や、屋久島の森林生態系に関する講義と「シカと森のカード」というシカと生物多様性について学べるカードゲームを実施しました。
樹木の学習では、班ごとに分かれ、林野庁職員が作成した「手作り図鑑」を使用し、10種類ほどの樹木について調べてもらった後、答え合わせを行いました。中には、葉っぱを見ただけで名前がわかる生徒もおり、校庭には50種類を超える植物があり、そのうち在来種は30種類以上あるということにとても驚いていました。どこにどの樹木が植栽されているか伝えたので、後日、実際に見てもらえたらうれしく思います。
その後、「シカと森のカード」を実践してもらいました。このカードゲームは、裏返しにしたカードをめくり、動物や樹木のカードを集めて「森」を造っていくのですが、シカのカードが増えすぎると一部の生き物や樹木が全滅してしまいます。生徒は、カードをめくるたびに一喜一憂し、時にはシカのカードをどう調整するか皆で話し合いながら学び、ゲーム終了後には、どんな「森」になったか発表してもらいました。シカをすべて駆除してしまった班、シカを含め多くの動植物がいる班とそれぞれの班で個性のある「森」ができました。
その結果をもとに、シカが増えすぎるとどのような影響があるのか、シカの頭数を調整するために、林野庁がどのような取組をしているのか講義を行い、長年の各行政機関の取組の結果、最もシカの頭数が多かった年と比較すると、確実に頭数が調整されてきているといった講義を行いました。そして、シカも森を造るうえでの重要な構成要素の1つであり、多くの動植物がバランスよく生息していることも重要だと伝えることができました。
手作り図鑑を使用し樹木名を調査(左)、ヤクシカの骨を実際に見て学ぶ(中)、「シカと森のカード」で楽しく学ぶ(右)
2024年11月22日(金曜日)
湯梨浜学園高校SSH事業屋久島研修生を受入
鳥取県湯梨浜学園高等学校からの依頼を受け、船行国有林111林班において同校2年生32名と教職員5名がヤクシカによる食害状況や対策等を現地にて体験学習しました。
同校は、環境保全に進んで取り組む科学的人材の育成を期待され、今年度より文部科学省にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、野生鳥獣による森林被害対策等が進んでいる屋久島において、実践的な調査手法や対策方法等を学ぶことを目的として、貴重な森林生態系を有する屋久島を2泊3日の日程で訪れたものです。
限られた時間の中で、屋久島到着後は、現地体験実習の場へ直接向かい、当保全センターの業務概要を奥村所長が説明しました。その後は、森林作業道を歩きながら、古市行政専門員から、シカの食害状況や痕跡、笠松式くくりわなの設置場所や設置する際の注意点等について、詳しく説明し質問等を受けました。生徒たちも初めての屋久島であり、関心も高く鳥取県と鹿児島県の罠の大きさの違いを質問するなど、短い時間の中でも有意義な屋久島研修となったようです。
当保全センターとしては、外部からの依頼に限らず出来る範囲の中で、他の機関と連携しながら屋久島としての取組など説明紹介し、情報発信していきたいと考えています。
保全センター業務概要説明(所長)(左)、シカ痕跡・食害の説明(中)、くくり罠等の説明(行政専門員)(右)
2024年11月20日(水曜日)
花之江河に堰設置作業
令和6年度の湿原保全対策の実施については、令和4年度に策定した湿原保全対策を踏まえ、本年度も局所的に浸食が進んでいる流路の浸食防止対策等を11月20日に、九州森林管理局、環境省、ガイド事業者、事務局の18名が参加し実施しました。
本年の対策内容として、10月26日の現地検討会で有識者より、東側流路が西側流路より地下水の低下に寄与しているとの助言により東側流路の流水分散対策の実施、祠土台部分の浸食防止対策及び、祠下流部分に浸食防止対策の実施が必要とのことでした。
当日の作業は、東側流路に5か所の堰(スギや広葉樹の枝条を束ねたもの)を設置し、流水を分散させるため木道下に枝条等の敷き詰めを行い、また、祠土台部分の浸食防止対策としてヤシネットで被覆し石積みを行い、祠下流部分に2か所の堰を設置しました。
新たに、浸食防止対策及び流水分散対策の試験実施を行いましたが、対策の効果を鑑みながら、今後も場所や手法を再検討するといった順応的管理に基づいて行っていくこととしています。
堰の作成(左)、流路に堰を設置(中)、堰の完成(右)
お問合せ先
屋久島森林生態系保全センター
ダイヤルイン:0997-42-0331