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北海道 池田町 受賞者レポート

森林×脱炭素チャレンジ2022  
優秀賞

王冠 北海道 池田町 王冠
町主導の広葉樹の森づくり 地域の自然と産業を元気に
 製炭技術の伝承と森づくり

 北海道池田町は、十勝平野中央のやや東寄りに位置し、町内の約6割が森林に覆われています。その約半分は多様な樹種で構成された広葉樹林です。これらの森林資源は、大正時代以降、木炭製造の原料として活用され、同町は道内有数の木炭産地として知られてきました。
 しかしながら、化石燃料の普及に伴い製炭業が衰退してしまったことから、町内の広葉樹林の多くは、50年ほど前に皆伐され萌芽更新した後、一切管理されていませんでした。このような森林では、樹冠層が単純な構成で林内に日が差し込みにくく、細い木が多いなど、健全な森づくりに向けた整備や管理が課題となっています。
 また、近年は、町内森林の約4割を占めるカラマツ林が木材としての利用期を迎え、その伐採や伐採後の再造林に林業事業体等の作業が集中したことなどにより、木炭生産用の広葉樹を伐採する担い手の確保が困難となり、町内の製炭業者は原木不足に悩まされ、貴重な地域産業が存続の危機にありました。

 多様な人々の協力で森を豊かに

 このような中、同町では、2017年より、広葉樹林管理の担い手を育成するため、町内の森林所有者など森林・林業に関心のある方々で構成する池田町林業グループと連携し、森林管理に関心のある地元住民等を対象とした技術研修会を開始しました。研修会では、SGEC森林認証を取得した町有林において、海外からも専門家を招き、森林管理に必要なチェーンソーの取扱い、環境に留意した選木や作業道敷設の方法等に係る技術の習得を目的とした講習を実施しており、様々な種類や大きさの樹木が混成する、多様性に富んだ森づくりが進められています。このような森づくり活動は、町内在住者だけでなく、近隣自治体住民からも参加者が集まるなど、関係人口の拡大にも貢献しており、視察に訪れた森林所有者が、自ら所有する広葉樹林の整備を開始するなど他地域の森林管理にも取組の効果が広がっています。

広葉樹林整備の技術研修会

広葉樹林整備の技術研修会

 広葉樹林を生かす地域産業

 2019年からは、町内製炭事業者に広葉樹丸太を安定供給するために、技術研修会参加者等を対象に、丸太の伐採や搬出作業に係る報償金を支払う制度を開始しました。その結果、現在では、町有林等から町内の製炭事業者に年間で木炭約1.7トン相当の製炭用の丸太を供給できるようになりました。
 また、2020年に木工作家、デザイナーで立ち上げたクラフトブランド「ホワイトバーチ×イケダ」へシラカバの樹皮や丸太を供給し、広葉樹林の整備を通じ、地域産業の振興に貢献しています。さらに、地元高校生に対する、森林資源を活用した物づくりをテーマとした実習の場としても活用されています。
 広葉樹の森づくりを通じて、地域の自然と伝統技術を守るとともに、新たな産業の芽吹きを支えることで地域振興につながっています。

「ホワイトバーチ×イケダ」の白樺コースター

「ホワイトバーチ×イケダ」の白樺コースター

イケダ高校参加のシラカバ樹皮の採取体験

池田高校参加のシラカバ樹皮の採取体験

     審査委員の講評

     林業事業者や住民との協働の場を醸成し、私有林や近隣自治体、地域産業にも波及する好事例で、かつ、海外専門家の招聘、国際的にも通用する認証取得など、規模は小さいながらも大きな視点を持って活動されているのが素晴らしいと感じました。

    榎堀 都(一般社団法人CDP Worldwide-Japan アソシエイト・ディレクター)

    お問合せ先

    林野庁林政部企画課

    ダイヤルイン:03-3502-8036