越井木材工業株式会社 受賞者レポート
森林×脱炭素チャレンジ2022
越井木材工業株式会社 |
SDGs・脱炭素に資する森林経営 |
明治期に木製電柱・鉄道の枕木の防腐処理を行う企業として創業し、原料調達のために山林を取得、現在では関西・九州の1府5県に約800haの社有林を所有しています。
社有林を適正に経営管理することは、SDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」だけでなく、森林のCO2吸収量確保により、目標13「気候変動に具体的な対策を」等に貢献すると考え、森林経営計画の認定を受け、植林から木材利用までを含む持続的な森林の経営に取り組んでいます。
こうした中、2020年後半頃から、米国の住宅建築需要が増加し、木材需要が増えたこと等に伴い、世界的に木材価格が高騰する、いわゆるウッドショックが発生しました。日本国内でも輸入材がこれまでのように入手できなくなる一方で、市場からの国産材への関心や、国産材の安定供給を求める声が高まっていることから、社有林の間伐材を活用した、国産材の新しいサプライチェーンの構築に向けてチャレンジを始めました。
社有林の様子
新たなサプライチェーンの構築 |
丸太を製材する際、丸太の大きさ等に合わせて、無駄なく、どのような規格の製材品を生産するか丁寧に検討することで、製材後の端材が減り、歩留まりが向上します。歩留まりが向上すれば、1本の丸太の価値が高まり、山元への利益還元、ひいては再造林につながります。
歩留まりを向上させる木取方法
このため、効率よりも歩留まりを優先する考えに賛同し取り組んでくれる各地域の製材所、生産された製材品を取り扱ってくれる大手ビルダーやホームセンターとともに、国産材供給プラットフォーム「KISM(キズム)」を立ち上げ、端材を利用した外構フェンスやDIY向けの資材など新しい商品の開発、販路の拡大を図りました。
「KISM」の取組は、各地域の森林組合や原木市場が参画し、全国7つの地域で国産材のサプライチェーンを構築し、2021年は月平均500m3の丸太が活用されました。社有林からはじまった取組は全国へと波及しています。
これらの取組を通じ、理念に共感した製材所の中には、事業の継承と更なる発展のため新規雇用に踏み出したり、いくつかの製材所が集まり共同で乾燥設備を導入する議論が行われるなど、前向きな取組がはじまっています。
丸太を供給する山側、丸太を挽く製材所、木材製品を購入する需要者が、それぞれにとってプラスとなる取引を実施することで、伐採後の再造林を可能とし、持続的な森林経営、そして森林の若返りによる森林吸収機能の強化へつながっています。
大分の製材所パートナーの作業風景
背板を利用した外構フェンス
ホームセンターでのイベント
審査委員の講評 |
効率性が主流である中、手間を惜しまず、人の技を活かす「製材業の歩留まり」を優先した点は、持続可能な森林経営、ひいてはSDGs・脱炭素において高く評価されるべきです。また、パートナー製材業者を通じて全国で取組が広がっており、今後の木材流通全体への波及効果を期待します。
原 薫(株式会社柳沢林業 代表取締役)
お問合せ先
林野庁林政部企画課
ダイヤルイン:03-3502-8036