アサヒグループジャパン株式会社 受賞者レポート
森林×脱炭素チャレンジ2022
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アサヒグループジャパン株式会社 | ![]() |
CO2吸収から地域振興 多様な価値の創出
はじまりは、アベマキの森から |
1941年に、同社のグループ会社、アサヒビールの前身である大日本麦酒(株)において、ビール瓶の王冠の裏地に使用していた輸入コルクをアベマキの樹皮で代用するため、広島県庄原市のアベマキ林を購入しました。1949年には、現地に森林を管理する事務所(現・アサヒの森環境保全事務所)を設置し、80年以上にわたり、森林の公益的機能の発揮に向けて、社員自ら森林の管理経営に取り組んできました。
アベマキの林(広島県三次市)
持続可能な森林管理に向けて |
現在、2,165ヘクタールまで拡大したアサヒの森では、森林経営計画の認定を受けて、森林を育てるための間伐、木材の収穫のための伐採(主伐)とその後の再造林(植栽)を計画的に行うことで持続可能な森林経営を実践しています。
2001年にFSC®認証を取得し、近年は国立競技場にFSC®認証材の供給を行いました。 また、林業の現場で課題となっている再造林のコスト低減に向けて、2021年には全国森林組合連合会と農林中央金庫とともに「低コスト再造林プロジェクト」に参画し、早生樹コウヨウザンを用いた再造林の実証実験に取り組みました。
アサヒの森から地域とつながる |
長年にわたるアサヒの森の経営のノウハウを生かし、近年は手入れが進んでいなかったアサヒの森周辺の民有林(財産区所有)と協定を締結して、対象森林をアサヒの森の森林経営計画に組み込み一体的に管理。2021年は対象森林で間伐を実施し、木材販売の収益を財産区に還元するなど、経済・環境両面において地域に貢献しています。
また、広島県庄原市が主催する地元小学生を対象とした森林環境教育のフィールドとして、アサヒの森を提供し、間伐材の丸太切りなどの林業体験や森林散策、自然観察を行っており、子ども達が森林や林業へ関心を持つきっかけとなっています。
森林散策の様子
アサヒの森が生み出す恵み |
暮らしや自然を支える森づくりに向けて、アサヒの森全山で生物多様性調査を実施し、毎年継続的なモニタリングを行うとともに、ブッポウソウの巣箱設置など希少種の保全にも取り組んでいます。
また、文化財建造物の修復等に用いる材料を提供する「ふるさと文化財の森」(文化庁)の認定を受け、文化の持続可能性にも貢献できるよう森林管理を継続しています。
さらには、同社の国内ビール工場で使用する水相当量を、アサヒの森が地下水として安定的に供給する「ウォーターニュートラル」を2025年に実現することを目指し、引き続き森林の適正な管理・経営に取り組んでいくこととしています。
アサヒの森が生み出す恵みは、CO2吸収や生物多様性保全等の公益的機能や地域振興など多岐に及びます。これらについてホームページを活用して情報発信することにより、森林整備の意義を普及するとともに、更なる取組への波及が期待されます。
巣箱を活用するブッポウソウ
審査委員の講評 |
森林保全に力を入れている企業は多いですが、単に森林保全にとどまらず、森林経営計画作成・間伐材の利用・収益の地元還元等、多岐にわたる活動を高く評価しました。今後は次世代の人財育成とともに、森林が持つ新たな価値創出にも期待します。
小寺 徹(一般社団法人CSV開発機構 専務理事)
お問合せ先
林野庁林政部企画課
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