平成28年度「北の国・森林づくり技術交流発表会」に参加
平成28年度「北の国・森林づくり技術交流発表会」に参加(平成29年2月2日~3日)
「北海道国有林におけるコンテナ苗の効果の検証」について
北海道森林管理局では、職員等が取り組んだ技術開発等の成果を広く普及し、民有林関係者等、森林・林業に関わる技術情報等の交換を図るため、例年「北の国・森林づくり技術交流発表会」を開催しています。
今年度は、2月2日~3日に北海道大学(学術交流会館)において開催され、「森林技術」「森林保全」「森林ふれあい」の各部門に国有林職員、民有林職員、各研究機関、高校・大学生、NPO等、計43課題の発表がありました。
当森林技術・支援センターは、局森林整備第一課と共同発表により、森林技術部門で「北海道国有林におけるコンテナ苗の効果の検証」と題し発表し、局長賞奨励賞を頂きました。(発表者:山嵜孝一森林技術専門官)
左は当センター山嵜孝一 森林技術専門官。右は局森林整備第一課、宿南恭兵さん。
【発表要旨】
コンテナ苗とは、栽培容器に培地を入れて根鉢を成形する苗木のことで、北海道造林主要樹種であるトドマツ・アカエゾマツ・カラマツ等については、平成21年度に育苗が始まり、国有林では平成23より当センターを含む3で植栽が始まり、平成25年度から道内全署へ利用が拡大しています。
当センターでは、平成23年度からコンテナ苗の成長等の調査を開始し、また、平成25年度からは各署で収集したデータを加え、コンテナ苗の効果を検証しました。
各署のデータを基にした検証結果は
1.T/R率を裸苗と比較したところ、トドマツ・アカエゾマツ・カラマツともにコンテナ苗の根が充実しています。
2.一区内に植栽したコンテナ苗と裸苗の1後の活着率を樹種毎に比較したところ、トドマツ・アカエゾマツの平均ではコンテ
ナ苗の活着率が高く、根付きが良い傾向が見られ、特に寒風等の気象害箇所では裸苗の活着率が大きく低下していることか
ら、コンテナ苗は気象害を軽減できる可能性があると考えます。
3.同一区内に植栽したコンテナ苗と裸苗の植栽後2年時点の成長量を箇所毎に比較したところ、トドマツ・アカエゾマツの樹
高・根元径の成長量では、コンテナ苗の成長量の大きい箇所が多くなりましたが、裸苗との植栽時のサイズ差を植栽後2年
の成長量でどの程度埋めているか見てみると、多くの箇所で植栽時の差を埋めるまで至っていないことから、効果は裸苗と
同程度と考えます。
4.同一区内においてこれまでの植栽時期である春・秋と、夏に植えた活着率を比較したところ、トドマツ・アカエゾマツの
夏期植栽での活着率は、春・秋に比べて差はありません。
寒風防止のため春の植栽のみ実施している帯広地区では、夏期植栽は春と比べて活着率に差は無く、また、夏・秋植栽のコ
ンテナ苗は寒風による被害を軽減できる可能性があります。
5.低コスト造林へのコンテナ苗の活用方法としては、伐採から植付までを一つの事業の中で実施する一貫作業があり、伐採
で使用した機械を地拵でも活用することで、地拵の省力化・低コスト化につながる利点により、苗木価格の高いコンテナ苗
でも地拵から植栽までのトータルコストでの経費削減が可能となります。また、いつでも植栽できるというコンテナ苗の利
点を活かすことからも、高効率化へ高い効果が期待できると考えます。
植栽効率は、地況にあったコンテナ苗の植付器具を使用することで、特別な知識や経験を要さず誰が植えても高効率を期
待できます。
調査結果のまとめとして、コンテナ苗の特性に加え、コンテナ苗利用による苗木生産での労働力不足解消や省力化、また、一貫作業によるコスト削減をコンテナ苗の効果としてトータルで評価すると、現状の課題である価格・サイズに対しても、十分な効果が期待でき、コンテナ苗を活用することで造林コストの低減に大きな役割を果たすことができると考えます。
最後に、本発表では植付までを取り上げましたが、さらなる低コスト化に向けては、今後の保育である下刈の省力化についても検討が必要になります。ただし、下刈については、コンテナ苗導入時に期待されていた成長効果で回数削減を考えるよりも、一貫作業の導入により地拵が機械化されることに着目し、ササの根茎を除去する機械地拵を確立することが重要と考えているところです。
(詳しくは、こちらをご覧ください(発表要旨)北海道国有林におけるコンテナ苗の効果の検証(PDF : 364KB))
※ コンテナ苗の成長データ等を全道的にとりまとめられたものは少ないため、データベース化や公開方法について、今後整
備していきたいと考えています。
森林技術・支援センターとしては、今後も森林・林業の技術開発を取り組み、成果について発表会等、様々な機会を通じ
て情報発信していきたいと考えています。
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