「先進的林業機械を活用した作業システム現地検討会」参加レポート (平成26年2月4日)
下川町森林組合では、作業の効率化、低コスト化による収益性の高い林業を実現するために、平成24年度林野庁補助事業「先進的林業機械緊急実証・普及事業」により、先進林業機械である国産の新型フォワーダとハーベスタを導入し、地域、現場の実情に応じた林業機械の改良などを進めています。
平成26年2月4日、下川町においてこの事業による「先進的林業機械を活用した作業システム現地検討会」が開催されました。
森林技術・支援センターでも、この研究と関連性の高い技術開発課題「北海道型作業システムを踏まえた路網作設に伴う林業生産コスト低減の検証」に取り組んでいることから、この検討会に参加し、勉強させていただきました。
欧州製先進林業機械と国産高性能林業機械による作業デモンストレーション
講演会「林業におけるイノベーションの意義と方向性」
当日はまず、下川町福祉センターにおいて、京都大学フィールド科学教育研究センター 准教授の長谷川氏により、「林業におけるイノベーションの意義と方向性」と題した講演が行われ、
- 日本の林業は高コスト体質で、未だ、林業先進地である北欧諸国の1970年代の水準に留まる
- 先進的林業機械と改良概要
- 先進林業機械の運用には、これらを効率的に稼働させ続ける大規模な森林資源と流通システムが必要
- 小規模な事業にはそれに見合った作業システムの活用が必要
これらについて、示唆に富んだ、大変参考になるお話を聞かせていただきました。
講演される京都大学 長谷川 准教授
現地検討会「国産の新型フォワーダとハーベスタによる作業見学」
続いて、会場を下川町の渓和町有林に会場を移し、平成24年度林野庁補助事業「先進的林業機械緊急実証・普及事業」で下川町森林組合に導入され、現場への適応改良等を行っている、国産の新型フォワーダ(積載集材車両)とハーベスタ(伐倒造材機)によるデモンストレーションが行われました。国産の新型フォワーダによる全幹材集材デモ
新型フォワーダによる集材作業
国産の新型フォワーダは、従来のクローラ(無限軌道)式ではなく、森林作業道の路面を痛めずに高速での運搬作業が可能なハーフトラック(前輪がホイル、後輪がクローラ)に、さらに車体の中折れ機能を追加し、旋回性を高めた先進林業機械です。
従来型では、走行用と集材用に別々の運転席があり、オペレーターは作業を変更する度にその移動を余儀なくされていましたが、この新型では運転席が180度回転し、移動することなしに全ての作業を行うことができます。
また、本事業での改良により、全幹材集材に対応できる脱着式クラムバンク(丸太をつかんで引く装置)と、繊維ロープが使用できるラジコンウインチが装着され、木寄せ作業の労働負荷の低減も図られています。
下川町の現場では、バイオマス資源の活用などを視野に入れ、伐倒した木を枝葉を付けたまま土場まで運び込む、全幹材での搬出を行っており、デモンストレーションでもクラムバンクを活用し5~7本程度の全幹材を引いて高速走行をしていました。
国産の新型フォワーダと全幹材をつかむクラムバンク新型ハーベスタによる伐木造材作業
一方、ハーベスタは、ベースマシンの窓に丈夫なポリカーボネートが採用されるなどした林業専用仕様となっているほか、ハーベスタ・プロセッサヘッド(伐採・枝払い・玉切りを行うアタッチメント)は、材の曲がりにも対応した高精度の玉切り長さを自動計測し、大径木から小径木まで、高速・滑らかな送材ができ、合わせて高速チェーンソーにより、玉切りの材割れを低減した新型です。
また、本事業での改良により、ヘッドに「品質確認カメラ」(運転席からは死角となり直接見ることができない丸太の品質を確認する)と、「マーキング装置」(丸太の径級や長さ別などに色を塗布し、土場での選別作業などを効率化する)が装備されるなど、機能が向上していました。
新型ハーベスタ・プロセッサヘッドを装着した作業今後の技センでの取組にむけて
森林・林業の再生に向け、作業の高効率化、採算性の向上、労働環境の改善は最大のテーマに数えられています。
今回見学した、改良された先進林業機械による作業は、その点、目を見張るものがありました。
森林技術・支援センターにおいて技術開発を進めている各種課題に対しても、このような機械が、森林・林業の現場であたりまえに稼働している将来の姿をイメージしながら進めていかなければならないと感じるなど、沢山のヒントをいただき、大変有意義な一日となりました。
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