「先進林業機械による低コスト人工林管理技術の現地検討会」参加レポート 」(平成26年1月10日)
農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業における「実用技術開発ステージ」の研究として「先進機械を活用した伐採・造林一貫システムによる低コスト人工林管理技術の開発」が「森林総合産業特区」である下川町の森林で進められています。
森林技術・支援センターでも、この研究と関連性の高い技術開発課題「北海道型作業システムを踏まえた路網作設に伴う林業生産コスト低減の検証」に取り組んでいます。
平成26年1月10日に下川町において、この事業による現地検討会が開催されたことから、当センターも参加し、勉強させていただきました。
欧州製先進林業機械と国産高性能林業機械による作業デモンストレーション
当日は、まず下川町の渓和町有林において、下川町森林総合産業推進課の専門員による事業概要説明に続き、国産の高性能林業機械と欧州の林業先進地であるフィンランド製の先進林業機械による間伐作業のデモンストレーションが行われました。
国産の高性能林業機械による間伐作業
国産機には汎用の建設用重機がベースとして使われています。
油圧ショベルのアームに、伐倒・枝払い・測尺・玉切りを行う「プロセッサヘッド」を装着した作業です。
玉切りされた丸太は、クローラタイプの「フォワーダ」で集材して土場へ搬出します。
欧州製の先進林業機械による間伐作業
国産が汎用の建設重機をベースとしているのに対して、欧州製の先進林業機械は、林業専用に開発されたホイル式トラクターがベースとなっています。接地圧の低いワイドタイヤが装着され(写真では雪上作業のため、タイヤの上にクローラを装着しています)、地面を攪乱せずに、高速で移動することが可能です。
伐倒・枝払い・測尺・玉切りを行うプロセッサは、最大10mまで伸びるアームを、人間の腕のように自由自在に動かすことができるため、作業時に機体を移動させる回数が格段に少なく、効率的な作業が進められます。
集材と搬出を行うフォワーダ、運転席から出ることなく、積み込みと運搬走行ができま。重心も林業専用設計のため低く抑えられており、安定した高速走行ができます。
2種類の作業システムを比較して見られる機会はなかなかないことから、我々も他の参加者のみなさんとともに作業の進み具合を一つ一つ確認するとともに、説明員に質問させていただき、大変参考になりました。
事業説明会と講演会
後半は会場を下川町総合福祉センターに移し、この研究事業の代表機関・研究総括者である、独立行政法人 森林総合研究所北海道支所 産学官連携推進調整監 佐々木尚三氏から、詳細な事業説明と「先進機械を活用した伐採・造林一貫システム」と題した講演が行われました。
講演ではまず
- 現在の日本の林業は、その生産コストが諸外国の倍以上になっており、木材市場における国産材の競争力が低いこと
- これらが林業経営意欲の低下、林業労働者の減少・高齢化につながり、ひいては森林の放置を招く一因ともなっていること
- これらを克服していくには、先進的な林業機械による高効率な作業等の徹底した低コスト化が最重要課題であること
などが説明されました。
そして本研究では、高性能林業機械を活用した「従来型」の作業システムと、先進林業機械を活用した「新たな」作業システムの比較調査等を進め
- 高能率地拵及び低密度植栽を応用した低コスト造林システムの開発
- 伐採から造林までの一貫システムの構築
- 伐採・造林一貫システムの資料収集とマニュアルの作成
- 技術の普及支援
など、林業の課題解決に取り組んでいくとのことでした。
講演終了後は質疑応答が行われ
- 林業機械が林地内を走行するときの留意点
- 林地残材などのバイオマスの活用と作業高効率化の両立
- 林業機械の性能の差だけではない森林施業全体での低コスト化への取組の必要性
などについて意見が交わされました。
今後の技センでの取組にむけて
本日の現地検討会等は、森林技術・支援センターが進める技術開発課題にとって、大変参考となり有意義な機会となりました。
当センターにおいても、事業ベースによる「低コスト作業システム」の実施と検証を進め、その成果を事業現場にフィードバックし、林産業の活力を高めることができるよう、さらなる取組を進めていきたいと考えています。
topへ戻る
お問合せ先
森林技術・支援センター
〒095-0015
北海道士別市東5条6丁目
TEL 0165-23-2161
TEL 050-3160-5755(IP)