管内の概要
管内の概況
南信森林管理署管内(伊那谷流域)は、長野県南東部に位置し、南アルプスと中央アルプスに挟まれ、流域面積は399,287haで、長野県全体の29%を占めています。このうち国有林野は4市5町7村に所在し、その国有林野面積は70,606haで流域面積の18%を占めています。また、官行造林地面積は7,651haです(平成24年3月31日現在)。
国有林野は、南アルプスや中央アルプスなどの山岳地域に多く位置し、その大半が南アルプス国立公園や八ヶ岳中信高原国定公園、中央アルプス県立自然公園などの自然公園に指定されています。仙丈ヶ岳や八ヶ岳、千畳敷カールをはじめとする雄大な山岳景観や豊かな自然を求めて、森林浴や登山、スキーなどに首都圏や中京圏などから多くの人々が訪れています。
森林の概況
管内の森林面積は、323,418haで流域面積の81%を占めています。このうち人工林面積は、149,256haで森林面積の46%、また、天然林面積は156,957haで森林面積の49%と、人工林と天然林の比率はほぼ同じとなっています。人工林を樹種別に見ると、流域全体ではカラマツが47%と最も多く、次いでヒノキ、アカマツの順となっています。国有林野の一部は、天竜川源流部の赤石山脈及び木曽山脈等の亜高山帯に位置し、コメツガやシラベ、カンバ等の天然林からなり、南アルプス国立公園や八ヶ岳中信高原国定公園、中央アルプス県立自然公園、三峰川水系県立自然公園に指定されています。管内の国有林の現況は、天然林73%、人工林27%であり、主な樹種としてはカラマツが23%、ツガ類その他針葉樹が20%ずつを占めています(平成24年3月時点)。
さらにこの流域には「糸魚川一静岡構造線」と「中央構造線」の2大構造線が走る複雑な地質構造であり、森林の持つ水質保全や土砂の流出崩壊の防備等の国土保全の役割が重要なことから、国有林野面積の96%が保安林に指定されています。
近年、国有林野のみならずニホンジカによる農林業被害、高山植物被害が深刻です。皆伐跡地は防鹿柵等の防護措置をとらないと造林することができない状況です。このため環境行政をはじめ、関係県関係市町村関係団体等と連携を図りつつ、特定鳥獣保護管理計画に基づき、剥皮を防止する保護ネット等の効果的な装着、防鹿柵や囲いワナの作設及び個体数調整に取り組んでいます。また、ツキノワグマやカモシカの被害については、剥皮等の被害を防止するテープ等の効果的な使用や個体数調整により造林地等における食害等を未然に防止するようつとめています。
公益的機能の推進
「国民の森林」である国有林の管理経営の基本は、公益的機能の発揮です。
機能類型にふさわしい森林の取り扱いを進めていきます。
南信森林管理署では、伊那谷流域の国有林野の有する水源涵養機能、山地災害防止機能や保健文化機能などの公益的機能の発揮を積極的に高めていくことを第一とし、あわせて地域に根ざしたカラマツ、ヒノキ人工林の育成等、それぞれ森林の機能が適切に発揮されるよう管理経営を行っています。
また、国有林野の管理経営にあたっては、開かれた「国民の森林」の実現を図り、現世代とともに森林からの恵みを伝えるため、住民の方々の意見を聞き、機能類型区分に応じた森林の適切な整備保全等による持続可能な森林経営に取り組んでいます。
このため、国有林野を重点的に発揮させる機能によって「山地災害防止タイプ(土砂流出崩壊防備)」、「山地災害防止タイプ(気象害防備)」、「自然維持タイプ」、「森林空間利用タイプ」、「快適環境形成タイプ」及び「水源涵養タイプ」の5つの機能類型に区分し、民有林の森林施業との連携に配慮しつつ、区分に即した健全で活力ある森林の整備を推進し、それぞれの目的に応じて適切な管理経営を行っています。
森林整備の方向
公益的機能の発揮を重視する公益林
山地災害防止タイプ(土砂流出崩壊防備エリア)
主に土砂の流出、崩壊の防備等山地災害防止機能の発揮を第一とし、そのため根系が深くかつ広く発達し、下層植生の発達が良好な森林等を目標として、管理経営を行っています。
具体的には
1.針広混交林や樹木の根系が深くかつ広く発達した森林、下層植生の発達が良好な森林は、現状を維持します。
2.天然力の活用により適確な更新が図られると認められる林分については、育成複層林及び天然生林へと導くための施業によることとし、択伐等によって、針葉樹と広葉樹、深根性樹と種浅根性樹種が混成するように努めています。
3.カラマツ等の人工林については、択伐間伐等により育成複層林へ導くための施業等を実施し、針広混交林への誘導に努めています。
(当該国有林の49%、34,724ha)
山地災害防止タイプ(気象害防備エリア)
管内には該当箇所がありません。
自然維持タイプ
貴重な森林生態系の維持等生物多様性の保全機能の発揮を第一とし、そのために良好な自然環境を保持する森林、希少な動植物の生育生息に適している森林等を目標として、管理経営を行っています。
具体的には
1.森林施業は原則として現況の森林を維持することを目的とした天然生林へ導くための施業として自然の推移に委ねる管理を行っています。
2.自然維持タイプの森林のうち原生的な森林生態系を保護する南アルプスの光岳周辺の森林(南アルプス南部光岳森林生態系保全地域)や、八ヶ岳西岳のヤツガタケトウヒ等を保存するために必要な森林(西岳ヤツガタケトウヒ等材木遺伝資源保存林)等を引き続き保護林として管理していきます。
(当該国有林の30%、21,321ha(うち保護林18,442ha))
森林空間利用タイプ
主に森林とのふれあいを通じた森林と人との共生等保健レクリエーション機能又は文化機能の発揮を第一とし、そのために多様な樹種からなり、周辺の山岳や渓谷等と一体となって優れた自然美を構成する森林等をそれぞれの利用形態等に応じ維持造成します。
具体的には
1.天然林は天然生林へ導くための施業によるほか、カラマツ人工林等については、原則として育成複層林へ導くための施業を行うこととし、間伐等による針広混交林化、自然観察等に適した森林の造成や修景伐などを推進します。
2.国民の保健文化教育的利用に供するための施設や森林の整備を行うことが適当と認められる北八ヶ岳自然休養林等を引き続きレクリエーションの森として管理し、広く国民に開かれた利用の場に供します。
(当該国有林の4%、3,015ha)
快適環境形成タイプ
管内には該当箇所がありません。
水源涵養タイプ
主に渇水緩和や水質保全等水源涵養機能の発揮を第一とし、浸透保水能力の高い森林土壌の維持及び根系、下層植生の発達が良好で、諸被害に強い森林を目標とし、それぞれの森林の現況等に応じた森林施業を行います。なお、水源涵養機能の確保に留意しつつ、森林資源の有効利用も図っています。
具体的には
1.周辺の森林資源の状況等から将来にわたって、人為を積極的に加えていくことが適切と判断されるカラマツ等の育成単層林においては、伐期の長期化を図り間伐を繰り返すなかで、下層植生が発達した林分構造を維持しつつ、健全な育成単層林を維持するための施業を実施します。また、比較的傾斜が緩く下層植生が豊かで、皆伐を行っても表土の流亡等のおそれのない林分については、伐採箇所のモザイク的配置や小面積分散型の施業を実施します。
2.特定の水源の保全、景観維持等を図るため、必要な林分については、複層伐等により育成複層林へ導くための施業等を行い、複数の樹冠層を構成する森林に誘導します。
3.天然林において、人為あるいは天然力を活用した更新が可能な林分については、択伐により育成複層林及び天然生林へ導くための施業を行い、複数の樹種及び樹冠層を構成する森林に誘導していきます。
(当該国有林の16%、11,546ha)
お問合せ先
南信森林管理署
ダイヤルイン:0265-72-7777
FAX番号:0265-72-7774