住友林業株式会社 受賞者レポート
森林×脱炭素チャレンジ2023
森林づくり部門
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住友林業株式会社 | ![]() |
「保続林業」の実践と脱炭素のサイクル |
住友林業株式会社では、森林の有する公益的機能を保ちながら木材資源を永続的に利用するため、苗木生産~植栽~育林~伐採~再植林という「保続林業」の基本理念のもと、日本の国土の約800分の1にあたる社有林を管理しています。社有林は、木材生産を重視する「経済林」と環境保全を重視する「環境林」に区分し、森林生態系の保全にも配慮しつつ、持続可能な森林経営を推進しています。
同社グループ全体では、森林経営から木材加工・流通、木造建築、バイオマス発電まで「木」を軸とした事業を展開しており、木を植え育てることによるCO2吸収の促進、木造建築による長期間にわたる炭素貯蔵、廃材や端材のバイオマス利用、といった同社グループによる炭素循環「ウッドサイクル」を回し、脱炭素社会に貢献する事業を推進しています。
住友林業のウッドサイクル
ヒノキの苗木を植林し10年経過した造林地
苗木の安定供給へ |
国内では人工林が本格的な利用期を迎えており、伐採後の再造林を確保するためには、苗木の安定供給が重要です。このため、同社では、温度や湿度を調整することで、通年での苗木生産を可能とした苗木生産施設の運営等を通じて、従来の露地育苗と比べて、単位面積あたりの生産量の飛躍的な増加を実現しており、国内に6箇所ある生産施設の整備により、全国で年間190万本規模の苗木生産が可能な体制を整えています。
各生産施設では、コンテナ苗木を載せた育苗台がレール上を自由に移動でき、1人で一度に1,500本以上の苗木運搬を可能にする「ムービングベンチ」などの採用により、労働環境の改善と作業効率の向上、コストダウンを実現しています。加えて、ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)の認証取得も進め、多様な人材が働きやすい労働環境を実現することで、各施設において常時40名、繁忙期には60名を超える雇用を生み出しています。また、自社施設における生産だけでなく、生産を委託することによる技術提供や、自治体と連携したコンテナ苗木生産に関する人材育成や生産技術の開発・普及などにも取り組んでいます。
このように、全国に苗木を安定的に供給することで再造林の促進に貢献するとともに、地域雇用や技術の普及などを通して地域の活性化にも寄与しています。
コンテナ苗木のムービングベンチ
環境負荷の軽減に資する苗木保護資材の開発 |
ニホンジカやノウサギ等が植林したばかりの苗木を食べる被害が林業の現場では大きな問題となっています。 |
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審査員の講評 |
森林と共に成長してきた企業として、川上から川下に至る細部の取組を高く評価しました。カーボンニュートラルはもとより、ネイチャーポジティブに取り組む企業として、新しい経済活動の場として森林活用を推し進めていただきたいと思います。
小寺 徹(一般社団法人CSV開発機構 専務理事)
お問合せ先
林野庁林政部企画課
ダイヤルイン:03-3502-8036