株式会社志賀郷杜栄 受賞者レポート
森林×脱炭素チャレンジ2023
森林づくり部門
株式会社志賀郷杜栄 |
建設業で培った技術を林業の世界へ |
森林の整備・保全や効率的な木材の運搬のためには、雨が降っても崩れにくい森林作業道などの道づくりに取り組むことが重要です。株式会社志賀郷杜栄は、10年ほど前まで手付かずであった京都府綾部市の志賀郷地区の共有林において、長年にわたって培われてきた建設業の技術やノウハウを活かして、急峻な斜面においても、低コストで耐久性もあり、修理もしやすい高密度の森林作業道(200m/ha程度)を開設するなど、森林所有者の負担なしで森林整備を行っています。
間伐を通じて伐り出した木材の一部は、山の麓にある自社の製材所において、地元業者と住民を対象にニーズに合わせた製材や販売を行っています。また、近年のアウトドア需要の高まりから、軽トラックに載せる木製キャンピングユニットや給排水設備不要のバイオトイレ等、間伐材を用いた幅広い木製品の製作・販売を手掛けており、県内外から高い評価を得ています。さらに、持続可能な社会づくりに貢献するために、製材の過程で発生する端材等を有効に活用した日用品などの開発にも力を入れています。
製材所の近くには、無人販売所を設置し、木杭を市場価格より安く提供するとともに、販売所が地域の方々の交流の場にもなっています。
森林作業道の整備
軽トラ設置型の木製キャンピングユニット
山に人が入ることで地域おこしに |
自社内で加工した商品はワークショップでも提供しており、これを地域観光ツアーの中にも組み込んでいます。この間伐材を活用した木工品づくりの体験プログラムは参加者から好評を得ています。
また、製材所で働く従業員は、綾部市の自然に惚れて移住したIターン者も多く、地域の雇用創出にも貢献しています。さらに、間伐等の施業後においても、整備された森林作業道は、地域内外の方々にハイキング等のレクリエーションに活用されるほか、地域の小学生を林内に招き、森林作業道を歩きながら森林体験をしてもらい、林業のことや森林と人との暮らしを伝える場としても活用されています。
このように、手付かずで人が入りにくい森林に、安心して地域の人がアクセスできる道を整備することで、地域の森林整備を推進するとともに、観光資源としての森林の利用に貢献しています。付加価値の高い森林資源の活用を通じ、利益が地域に還元されることで、地域が活性化していくことを目指しています。
木製のコップ等の日用品
森林作業道を小学生が森林学習に利用
審査員の講評 |
道づくりによって、地域内外の方々が森林を活用する機会が増え、雇用創出・観光資源として地域が活性化していく取組をしており、高く評価しました。山村地域の振興の1つのモデルケースとして、取組が波及していくことを期待します。
皆川 芳嗣(株式会社農林中金総合研究所 理事長)
お問合せ先
林野庁林政部企画課
ダイヤルイン:03-3502-8036