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林野庁

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越井木材工業株式会社 受賞者レポート

森林×脱炭素チャレンジ2023
森林づくり部門

優秀賞

王冠 越井木材工業株式会社 王冠
国産材のサプライチェーンで都市と森をつなぐ
 持続可能な森林経営を目指して

 2021年の輸入材の不足・価格高騰、いわゆるウッドショックが発生したことから、海外市場の動向に左右されない安定供給が可能で競争力のある国産材のサプライチェーンの構築が必要となりました。そのため、越井木材工業株式会社では国内の社有林を中心に各地域の素材生産者と製材所をネットワーク化するとともに、歩留まり改善による多様なグレードやサイズの製材を商品化する取組として、持続可能な森林経営を目指す国産材供給プラットフォーム「KISM(キズム)」事業を立ち上げています。
 2022年は新たな商品化・用途開発として、屋外用家具の開発や都市部の共用施設の木質化、また、様々な規格の需要があるホームセンターをはじめとしたDIY・リフォーム市場へのマーケティングにチャレンジしました。さらに、間伐材を木杭として森林斜面に打ち込むことで表層崩壊を防ぐ、山腹斜面崩壊抑止工の開発にも取り組んでいます。森林の根系が持つ機能を羽根板と木杭に持たせた独自の工法です。
 また、国産材のサプライチェーンを持続的なものとするためには再造林が重要である、という考えを社内外に共有することで、社員自ら「植林活動がしたい」といった声が上がり、同社の社有林において社員や取引会社も参加する植林活動が始まりました。森林づくりを通じて未来を担う人づくり・仲間づくりへとつながっています。

サーモウッド処理した木材のホームセンターへの展開

サーモウッド処理した木材のホームセンターへの展開

社員と地元建築業者との植林活動

社員と地元建築業者との植林活動

     国産材の利用により都市と森をつなぐ

     屋外でも長く安心して使える屋外用木製家具を家具メーカーと共同開発しました。座板、背板に使用するヒノキ材をサーモウッド処理(薬剤を使用せずに熱と水蒸気だけで木材の性質を向上させる技術)して耐久性を改善した椅子をはじめとした家具で、マンションの共用部や商業施設など、人の交流の場での活用が期待されます。
     また、近年、社会問題となっている、温暖化に伴う熱中症対策として、都市部のバス停の待合場所において、熱をためにくい木材の性質を利用した木製の日よけやウッドデッキの設置などの公共施設の木質化にも取り組んでいます。木材のぬくもりのある景観の形成にも繋がり、都市部のニーズに合致した木材利用を進めています。
     このように、都市部においても森の恵みを取り入れることで、都市生活における様々な課題の解決が期待できます。国産材利用を通して、都市部に木の文化が浸透していくことで生まれる価値の一部が山林へと還元され、持続可能な森林経営へ繋がるとともに、森林の若返りを図ることで森林のCO2吸収機能の強化にも貢献する、山間部から都市部までをつなげる脱炭素時代の新たなサプライチェーンが期待されます。

    屋外用木製家具

    屋外用木製家具

    木質化した都市部のバス停留所

    木質化した都市部のバス停留所

     審査員の講評

     家具メーカーや自治体との協働なども含め、どの活動も自社の戦略として取組まれています。継続した取組の中に新しい試みも見られ、二年連続の受賞にふさわしいと感じました。日本の林業業界の明るい未来を感じられる同社の取組にこれからも期待しています。

    榎堀 都(一般社団法人CDP Worldwide-Japanアソシエイト・ディレクター)

    お問合せ先

    林野庁林政部企画課

    ダイヤルイン:03-3502-8036